政府の「スクール・ニューディール」構想が動き出す。公立小中学校1万2000校に太陽電池を設置することなどを目標に掲げる。補助金の総額は1兆円を超える。学校が新型太陽電池や次世代送電網の実験場になりそうだ。

写真1●グリーンテックの開発した「ソーラーウェーブ」
写真1●グリーンテックの開発した「ソーラーウェーブ」
プールの上など視認性の高い場所への設置を提案している。

 この構想は、エコ改修、耐震化、ICT(情報通信技術)化を一体的に進めるのが目的。ただ、「太陽電池の設置には、地方公共団体の費用負担を平均2.5%まで軽減するなど、重視している」(文部科学省施設助成課)。

 これまで学校向け太陽電池というと、校舎の屋根上に設置し、発電量を示す表示パネルを校舎内に掲示するパターンが多かった。今回はより教育効果の高いもの、そして地域の避難所の役割を考え、非常用電源の機能を備えたシステムも求められる。

 太陽光発電システムの構築・設置を手がけるグリーンテック(京都市)は、学校向けに3つの戦略商品をそろえた。太陽電池パネルを斜めに立体的に並べる「ソーラーウェーブ」(写真1)、日射を最大に受けられる太陽追尾式システム、そしてシースルー(半透明)型薄膜太陽電池をガラスに挟んだ建材一体型だ。

 いずれも外部調達した太陽電池を独自技術でシステム化した。同社の川勝一司社長は、「太陽電池パネルを校舎の上に設置したらほとんど見えない。教育効果を高めるには、いかに日常的に見せるかが重要」と言う。ソーラーウェーブはプールの上、太陽追尾式は校庭、シースルー型は壁面や天窓としての設置を提案している。

二次電池併用型の先駆けに

 ソーラーシリコンテクノロジー(千葉県木更津市)も量産が始まったばかりの集光型球状シリコン太陽電池をガラスに挟んだ建材一体型を開発し、学校に提案する。一般の結晶シリコン型に比べ集光型は割れにくく、建材に向いているという

 加えて、同社が力を入れるのが、学校用の二次電池付き太陽光発電システムだ。22kWの太陽電池パネルに容量16kWhのリチウムイオン電池を組み合わせる。太陽光発電の電力を二次電池に充電し、余剰分は売電する。「被災時に避難所になった場合、これだけの蓄電量があれば、最低限の照明とパソコンが一晩使える」と、手塚博文社長はみている。

写真2●三洋電機製の太陽電池パネル
写真2●三洋電機製の太陽電池パネル
三洋は、リチウムイオン電池と組み合わせ、被災時に備えたシステムを構築、提案する。

 三洋電機も同様のシステムを提案している(写真2)。同社は来春、非常用電源向けに容量22kWhのリチウムイオン電池を発売する。これに20kWの太陽電池と表示装置を組み合わせ、非常時にも対応できるエネルギー管理システムを構築する。柴田康祐マーケティング本部長は、「いまは交流に変換してつないでいるが、太陽電池も二次電池も直流なので、将来、直流のままつないで変換ロスをなくす次世代型の屋内配電に発展していく可能性もある」と言う。

 ソーラーシリコンテクノロジーの手塚社長は、「学校向けの二次電池付き太陽光発電システムは、日本型スマートグリッド(次世代送電網)の先駆けになる」と期待する。