大成建設のCIO(最高情報責任者)に当たる柄登志彦・社長室情報企画部長
大成建設のCIO(最高情報責任者)に当たる柄登志彦・社長室情報企画部長

 「社内情報格差を無くすのが私の使命だ」。こう話すのは大成建設のCIO(最高情報責任者)に当たる柄(つか)登志彦・社長室情報企画部長だ。

 大成建設は、柄氏の前任者である木内里美氏(現・大成ロテック監査役)の時期に大型コンピュータの旧システムを廃止し、IT基盤の総入れ替えを完了させた。2008年6月にCIOに就任した柄氏はこれをさらに発展させる役割を担う。具体的には、仮想化技術を用いたサーバーの統合や、情報セキュリティーの強化を進めている。

 既にサーバー側では、工程管理など社内情報共有用のツール類はインターネット経由で社内外から使える環境を整備している。あとは、情報セキュリティーを担保しつつ、建設工事現場で使い勝手の良いIT環境を整備するのがカギになる。「製造業や流通業ではIT(情報技術)は業務の中核を担うだろうが、建設業の中核はやはり人。人に役立つ小さな便利ツールを社内情報格差なく使えるようにしたい」と説明する。社内と言っても、大成建設では1000以上ある作業所(建設工事現場)には、ダム工事現場のようなへき地もあれば海外もあり、パソコン・通信環境などを統一するのは難しい。ICカードを使った高度なアクセス制御なども試行したが、結局定着しなかったという。現在、セキュリティー監査を受けて証明を得たパソコンに限って、社外からでも社内システムに接続できる仕組みの構築を進めているところだ。

 柄氏は大成建設で長く土木部門に勤務し、特にコンクリート構造が専門だ。現在の部署に異動する前は5年ほどユーザー部門側のIT関連部署に在籍した経験もある。こうした視点から、IT業界の発注・契約慣行に対して疑問を持つこともあるという(下記のProfile of CIO参照)。

Profile of CIO
◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・見積もりから施工までのコスト変動が大きすぎます。当初の工数見積もりからどんどん工数が膨らんでコストも増えてしまいます。
・土木業界では「仕様設計」から「性能設計」という契約・発注方法に移行しつつあります。工数に応じた見積もりではなく、「○○という性能を満たす橋をいくらで作ってもらう。性能が満たされていればどんな工法を採用してもよい」という方式です。受注側のリスクは大きくなりますが、土木業界でできているのだから、それより技術的な不確実性が少ないソフトウエア業界でもできるはずです。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・朝日新聞、日本経済新聞
・日経コンピュータ、日経情報ストラテジー、IT Leaders

◆最近読んだお薦めの本
・SF小説が大好きです。特に『深海のyrr』(フランク・シェッツィング著、北川和代訳、ハヤカワ文庫)は面白かった。『知性化戦争』(デイヴィッド・ブリン著、酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫)も良かった。
・『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン著、青木薫訳、新潮文庫)
・『ボックス!』(百田尚樹著、太田出版)
・ビジネス書では『次世代環境ビジネス』(尾崎弘之著、日本経済新聞出版社)、『コンサルタントの「現場力」』(野口吉昭著、PHPビジネス新書)を興味深く読みました。

◆仕事に役立つお薦めのインターネットサイト
・いつもYahoo!かGoogleで検索してあちこちのサイトに飛びますので、特に固定したサイトを見ているわけではありません。よく行き着くのは、Wikipedia、ITpro、ITmediaなどです。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・土木学会
・日経コンピュータのシステム部長会、日経情報ストラテジーのCIO倶楽部など交流会には随時参加しています。元々専門外の分野でしたから、様々な業種の情報システム部門の方との交流はとても刺激になり、勉強になります。

◆ストレス解消法
・音楽鑑賞。ジャンル問わずiPodに大量に入れて、湯水のように浸ります。よく聞くのは、イエス、トッド・ラングレン、2パック、キース・ジャレット、中島みゆき、浜崎あゆみ、佐野元春、光田康典、バッハ、チャイコフスキーなどなど。
・落語。たまに会社近くの新宿・末廣亭に行くのが楽しみです。枝雀、志ん朝、志の輔などがお気に入り。iPodにも入れています。
・アメリカンフットボール観戦。世の中で最も完成度の高いスポーツだと考えています。米NFLのシーズンが始まると毎日夜中にテレビで観るので寝不足になってしまいます。同業の鹿島のように自社のチームがある会社をうらやましく思います。

■修正履歴
最終段落で柄氏の経歴に関する記述に誤りがありました。柄氏の専門は海洋土木ではなく「コンクリート構造」でした。「情報システム部門の経験はない」という記述も誤りでした。お詫びして修正いたします。本文は修正済みです。[2009/09/30 18:45]