英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門 プレジデント ラリー・ストーン 英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門
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 世界は温暖化防止のためCO2削減へとかじを切っている。OECD(経済協力開発機構)の最近の報告では,世界の人為的なCO2排出量はここ数年年率2%のペースで増加しているという。まずはこの成長を止める必要がある。そして恒常的な低炭素社会を実現するには,ここ5年から10年が勝負になるだろう。2020年が一つの目安という共通認識が出来つつある。

 通信とICT関連の企業が参加して2001年にベルギーで組織されたGeSI(Global e-Sustainability Initiative)は2008年6月に,2020年を「SMART 2020」と呼ぶレポートを出した。ICT分野の企業がエネルギーの効率利用を目指して“スマート化”を推進することで,15%のCO2削減に貢献できると報告している。スマート化の分野として挙げられているのは,スマート・ビル,スマート・ロジスティクス,それにスマート・グリッド,スマート・メーターなどだ。

 スマート化の取り組みは,具体的に進み始めている。例えば,オランダのアムステルダムでは6月から米アクセンチュアの協力を得て「アムステルダム・スマート・シティ計画」が進行中だ。ICTを駆使して欧州初のインテリジェント・シティを目指している。

国によるさらなるリーダーシップを

 低炭素社会を実現するためには,政治やビジネスの意志決定過程でスマート化の要素をきちんとチェックすべきだと思っている。現在,低炭素社会の実現を経済復興の対策にしようと多くの国が動いているが,財政投資に限るケースが多い。それだけではなく,電気の送配電システムにインターネットなどのデジタル技術を組み込むといった指導にも積極的に関わるべきだと思う。

 さらには社会のあらゆる人が,CO2削減の手法を考えていくことも大切だろう。CO2が影響するコストを理解している経理担当者,建築物のCO2削減をいつも考えている建築士,設計した設備が社会のエネルギー消費にどれだけ影響を与えるか知っているエンジニア,学校で低炭素社会の意味を常に教える先生,省エネルギーが魅力あるコピーになると理解しているマーケティングや広告業界の管理職,健康と低炭素社会の関係を理解している医者,それに日ごろのビジネスでCO2削減を具体的に促進している会社役員──だ。

 このような動きを加速する上でも,低炭素社会実現の方向性を指し示すリーダーシップが求められる。リーダーの示すビッグ・ビジョンこそ世界を具体的に変革させる。その意味では,この12月に開催されるコペンハーゲン・サミットを注視したい。

 世界の主要国では,これからの国際競争が気候変動への対応に集中するという認識を共にしつつある。米国オバマ政権の気候変動特使のトッド・スターン氏は,「米国は注意しなければ,温暖化対策で中国に追いつけなくなる可能性もある。今は(CO2削減を渋る)中国政府に圧力をかけている立場かもしれないが」と述べている。明日ではなく,今から対策を打つことが重要なのだ。

ラリー・ストーン(Larry Stone)
英BTグループ パブリック&ガバメント・アフェアーズ部門 プレジデント
 2019年に日本でラグビー・ワールドカップが開催されることになった。ビッグニュースだ。ラグビーや相撲などを見て分かるように,英国と日本はスポーツ観戦のマナーが良いところが似ている。同様にビールを飲んでいるときなども社会的な規範を感じる。多分,大陸から離れた島国であることが関係しているのではないか。2019年のW杯には東京に行くつもりだ。日本人と同様のマナーを持つ1万人の英国の同胞も一緒だろう。