EMCジャパン 代表取締役社長 諸星 俊男氏
EMCジャパン
代表取締役社長
諸星 俊男氏

 EMCはストレージシステムのイメージが強いようだが、その売上比率は半分にも満たない。ストレージやセキュリティ、コンテンツ管理などの情報インフラストラクチャと、仮想化技術を用いた仮想インフラストラクチャを2本柱に、ソフトウエア、サービスを含めたITインフラストラクチャの全体最適化を提案している。

 企業の課題であるコスト削減と全体最適化は、密接に関係する。経済環境が厳しい今日、企業のIT投資意欲が衰えている。だが、近い将来景気が戻っても、以前のように急激なV字回復は期待できず、継続的なコスト削減策が企業に求められるだろう。

 企業の課題は、現行システムの維持費削減である。CIOは、IT予算の7割以上が現行システムの維持に費やされ、新規投資に予算を充てられないことに悩んでいる。その結果、システムを利用するユーザー、システムを維持運用するIT部門の双方がフラストレーションを感じているようだ。こうした中、コスト削減とITインフラストラクチャの最適化を両立する新たなアプローチが必要になる。

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 あるITコンサルティング会社では、コスト最適化に向けた4つのレベルを提唱している。レベル1はベンダーからのIT購買に対して最良の価格と条件を引き出す「IT調達・購買の最適化」、レベル2は既存システムのムダを省く「既存ITのコスト削減」。レベル3はプロセスや人、ITなど業務全体のコストを削減する技術を導入し「業務とITの連携による業務運営コストの削減」を行う。レベル4はプロセスの改善などを通じた「イノベーションとビジネス再編の実現」である。

レンタルプログラムでITコストを削減する

 当社は、短期的、中長期的の両面からコスト削減と最適化戦略を提案する。そして、ファイナンス、オペレーション、ビジネスのそれぞれの要件において、どんなインパクトがあるのかを分類したうえで、前述の4つのレベルに応じたアプローチを提唱している。

 レベル1では、短期的なコスト削減の要求に応えるため、IT投資を有効活用するグローバル・ファイナンシャル・サービスを用意している。機器のレンタルや従量課金の採用など、ITコストを経費で処理できる。また、システムをすぐに導入したいが支払は来期の算からにしたい、といった要望に応えるレンタルプログラムもある。

 そして、市場優位性を生かした価格設定により、システムを低コストでリースしている。こうしたIT調達・購買の最適化により、ビジネス状況に合わせた購入支援や将来にわたる投資保護を支援する。

 レベル2に関しては、ITインフラストラクチャの全体最適化に向けたサービスレベルの策定やアーキテクチャの標準化、仮想インフラストラクチャサービスなど最新技術を採用した製品群を提供する。例えば、当社では1台のストレージの中に複数の仮想データセンターを構築するシステムを提唱している。1台の仮想化サーバーと仮想エンジンの最小構成で運用をスタートし、ニーズに応じて拡張していくこともできる。

 仮想データセンター内のデータ移動は自動的に最適化され、ユーザーはデータの格納場所を意識することなく情報を活用できる。ある企業では仮想データセンターに移行することで、ストレージコストや消費電力の削減成功に加え、ドライブの処理性能が大幅に向上した。これにより、システム全体のムダを省き、既存ITコストの削減を実現できたという。

ITインフラの基盤となるプライベートクラウド

 レベル3へのアプローチでは、情報インフラストラクチャのあるべき姿を考え、全体最適を図るアプローチを提唱している。情報インフラストラクチャの仮想化、統合・階層化、バックアップ、ディザスタ・リカバリ、セキュリティ、コンテンツ管理、データセンター、そして運用管理の最適化にかかわる戦略立案から実装計画、設計、実装、運用、評価までトータルに支援する。

 例えば、部分最適で複雑化した既存システムを見直し、情報インフラストラクチャを最適化するとともに、蜜結合のインフラとアプリケーションを疎結合に変える。これにより、インフラはアプリケーションに制約されることなく、新機能の適用も柔軟に行える。加えて、情報インフラストラクチャの全体最適を支援するサービスポートフォリオも用意している。可視化ツールを用いてシステム上を流れるデータを把握、評価し、システム管理台帳を作成する。そのうえで、情報インフラストラクチャのあるべき姿を提案している。

 レベル4に対しては、ビジネス要求に対応するITインフラストラクチャを提供。コンテンツ管理などを活用してナレッジワーカーに適した情報環境をつくり、イノベーションを支援する。ITインフラストラクチャの要として期待されるのが、クラウドコンピューティングである。当社では、企業単位で構築するプライベートなクラウドを提案している。既存データセンターの要件である信頼性や管理性、確実性、安全性と、クラウドの特徴である柔軟性や効率性、ダイナミック、オンデマンドといった優位性をうまく融合し、プライベートのクラウドを構築する。このクラウド上の仮想インフラストラクチャを基盤に、サーバーやストレージ、ネットワーク、アプリケーションなどのITリソースを活用していく。

 EMCジャパンでは、今後も情報インフラストラクチャと仮想インフラストラクチャを実現する製品・サービスを通じて、企業の課題であるコスト削減とITインフラストラクチャの最適化を支援していく考えである。