日本ユニシス 常務執行役員 ICTサービス部門長 角 泰志氏
日本ユニシス 常務執行役員 ICTサービス部門長
角 泰志氏

 従来の企業情報システムといえば、インフラから業務ソフトの開発環境までを所有し、自前で構築してきた。

 これがクラウドコンピューティング時代になって、様相が全く異なってきた。ユーザー企業は、その時々のニーズに適したものをネットワーク経由で使う。料金は、利用した分だけ月額または従量制課金で支払う仕組みだ。電力に例えるなら、自家発電をするのではなく、発電所から送電されてくる電力を家庭のコンセントから必要な時に利用するという感覚である。

 このようにクラウドコンピューティングは新しいITの利用形態であるが、企業はどのように使いこなしていくべきだろう。

 クラウドコンピューティングは、それぞれの立場で様々な利点がある。

 サービス利用者である社員にとっては、端末を選ばないので、それだけ業務の生産性を向上できる。

 システム担当者にとっては、保守が7割といわれるシステム運用から解き放たれることが大きい。

 経営者にとっての利点は、固定費だったIT投資を変動費化し、高額な初期投資が不要になることだ。

クラウドの真価はビジネスイノベーション

 一方、よりマクロな視点で見ると、クラウドの真価はビジネスイノベーションにあるといえよう。自社ソリューションと他社SaaSを連携し、素早いサービスインを実現するほか、自社コンテンツやシステム機能をSaaSとして販売すれば、新たなビジネスチャンスも生まれる。

 クラウド時代を迎えて、日本ユニシスにも変化が訪れている。システム構築やソフトウエア開発、駆けつけ保守など、これまでの労務提供型のビジネスは、技術者が客先に分散するために、組織的な技術の蓄積やスキルアップが困難だった。しかし、クラウドによって利用者ニーズを先取りするソフトウエア・サービス企業として、先進技術の研究開発とサービス提供に軸足を置き、技術者のモチベーションを高められる。

 クラウドは、可用性、完全性、機密性に関して問題があると言われている。しかし、可用性の課題については、主要各社のクラウドには詳細なSLA(サービス品質契約)の記述があり、現実的には公表値を上回る可用性を実現している。SLAと費用を勘案したクラウドを選択するとよいだろう。完全性や機密性の課題については、内部統制や情報開示に関する法整備も待たれるが、現行制度を前提に、利用するサービスは海外のものでも、重要なデータは国内に置くといった現実解は見つかる。

 こう自信を持って言えるのも、既に日本ユニシスではクラウドICTサービスを開始しているからだ。

 弊社のICTサービス事業は、大きくサービス提供事業とアウトソーシング事業からなる。両事業のiDC基盤(MiF:Modeled iDC FARM)は物理層(インフラリソース群)を統合化しており、最上位のサービス層から見えるのは仮想化された論理層(サーバー、ストレージ、ネットワーク)だけだ。物理層と論理層を分けることで高可用性を実現した。インフラリソースの提供・管理プロセスは完全自動化されているのが特色である。

 このiDC基盤で提供されるアウトソーシング事業がICTホスティングサービスだ。初回契約時には5営業日から、継続利用では24時間以内にストレージやCPU、メモリーなどのリソースを提供する。イベント対応など緊急時のリソース追加には最短5時間で対応。業務ニーズに合わせてダイナミックに変更できる。 弊社ITプロフェッショナルチームによる利用環境の常時監視、専用窓口を通じた24時間の問い合わせ対応など運用サービス、顧客サポートも充実しており、安心して利用できる。

 さらに、サービス提供事業の一環として、SaaS利用者や提供者をつなぐマーケットプレイス「ビジネスパーク」を展開中だ。Java、.NETといった、SaaSアプリケーションの開発・実行環境を提供するSaaSプラットフォームサービスも提供している。他社類似サービスとの大きな違いは、Web経由で豊富なSaaSアプリケーションを利用でき、基幹系システムについてもクラウド化できる点である。

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今後はマルチクラウドやストレージクラウドも提供

 弊社が今後、提供したいと考えているクラウドサービスは2つだ。

 1つ目のマルチクラウドサービスは、パブリッククラウドを含めた世界中のクラウドを日本ユニシスのサービスで統合し、ワンストップで顧客に提供するもの。今年度中に正式に立ち上げたい。具体的にはAWS(Amazon Web Services)など他社クラウドとの連携サービスや、それに付随するアプリケーションと開発実行環境を提供する予定だ。

 2つ目のストレージ・クラウドサービスは、分散ストレージシステムだ。国家レベルの機密データや大企業におけるユーザーファイル・データなどの重要データを長期間にわたりセキュアに保管する用途を見込んでいる。

 データセンターそのものを分散化することで、顧客ニーズの高いセキュリティ対策やデータバックアップ、ディザスタリカバリ(災害対策)、BCP(事業継続性)などの観点から期待されている。

 日本ユニシスグループの、日本ユニシス、ユニアデックス、エイタス、ネットマークスの4社で、システムおよびネットワーク構築、各種導入・運用・保守をトータルに提供できる。このアドバンテージを生かし、日本のお客様の高度なニーズを満たす「真のクラウドコンピューティング」をいち早くお客様のもとにお届けしたい。