市場の伸縮に対応できる弾力性のある環境を構築せよ景気好転時に備えたエラスティック経営とIT---アクセンチュア 程 近智氏
アクセンチュア
代表取締役社長 程 近智氏 講演タイトルにある「エラスティック経営」とは、好況・不況に合わせて伸縮自在で柔軟な対応力を持ち、成長力と持続力を持つ経営のことだ。こうした経営では、事業規模の伸縮だけでなく、事業自体を自由に取捨選択していく。 エラスティックという言葉にはもともと、輪ゴム、伸縮素材、はずむ、弾力性のある、融通の利く─などの意味がある。エラスティック経営は、輪ゴムのような柔軟な企業体になることであり、輪ゴムのような企業体が絡まると、新しい事業体やコンセプトが生み出される。 なぜ、エラスティック経営が必要かというと、嵐のような経済環境の変化が世界で同時に発生しているためである。 これまでの世界市場は、日米欧の先進国が中心だった。ところがBRICsをはじめとする新興国が急速に成長して、高度にネットワーク化されたバリューチェーンの中で先進国と新興国が相互に依存する、多極化した世界が生まれつつある。 日本の高度成長時代は、米国のマーケットに向けて必死で製品を作り、欧州が動いたら欧州に行くという、大きな道筋がはっきりと見えていた。しかし、これからは多極化した世界市場で、いろいろな国やマーケットと付き合わなければいけない。 そんな中で、リーマン・ショックやITバブルなど、世界を揺るがす大きな波動が5年、10年サイクルでやってくる。同時に、今までは無視していればよかった小刻みなスパイク(自然災害や都市災害、民族紛争など)が、多極化した世界の景気に影響を与えるようになる。 そのような経済環境の中で生き残るために、企業はエラスティック、つまり弾力性を持つ必要がある。弾力性とは、戦略的な弾力性、プロセスの弾力性、ITの弾力性である。そして、縮むだけでなく、再び景気が良くなって伸びるときのことを意識しておかなければならない。 事業ポートフォリオ再構築には財務の堅牢性が重要エラスティック経営には、財務の堅牢性と弾力性、プロセス改革、自社のアキレス腱の強化が求められる。特に、財務の堅牢さと柔軟性が重要である。企業が伸びているときには、自分達のお金だけでなくリスクマネーをうまく使う財務力が必要になる。財務力が強ければ、企業買収などによって好機を逃さず事業ポートフォリオを素早く入れ替えることが可能になる。 一方、縮んでいる最中には、例えば、ハイエンド市場に集中するのか、成長市場に打って出るのか、または両方やるのかを縮んでいる段階で決めておく。そういった方向性をある程度決めたうえで、景気の好転に備えなければならない。また、現在のような世界同時不況になると、自社の弱い部分、すなわちアキレス腱が見えてくる。経済が回復する前にそこをしっかりと鍛えなおすことが重要になる。 戦略からプロセスに目を移すと、縮み局面では、無駄を徹底的に省く。自社に最低限必要なのものをゼロベースから考えて、業務プロセスを効率化する。具体的には、必要最低限のプロセスとは何であるかを見極め、業務フローの要所を見極め、役割・権限の見直しによるプロセスの簡素化を図る。また、何でも縮めて省くのではなく、例えばリスクとコンプライアンスは重視するなど、濃淡を付けて業務改革を行っていく。 システム面は、多極化に備えてボトルネックを解消していく。業務を見える化、標準化しておけば、景気が好転して需要が回復してきたときに、他社に先んじて伸びていくレバレッジポイントを見つけられる。また、効率化だけでなく能率化、すなわち能力を最大限に出すための仕組みを同時に考えなければいけない。 そして、自社で保有すべき必要最低限のプロセスは何かを考え、次に外部にアウトソーシングできるプロセスかどうかを考える。例えば、顧客数、売り上げ、処理量で需要が変動するようなプロセスはできるだけ外部化して、自分たちでリスクを抱えない。また、新規事業関連のプロセスはできるだけ外部化して対応する。 クラウド時代のIT部門はプロデューサーになるエラスティック経営とITの関係を見ると、3つの側面がある。ITコストの効率化、ITから提案する業務プロセス改革、それに新しいITの地殻変動への備えである。 縮んでいる最中の企業の多くは、ITの効率化をしっかりやっている。例えば、サーバー/ストレージの統合、仮想化によるコスト削減、データやユーザーインタフェースの統合、集約管理などだ。新しいITの地殻変動としては、クラウド/SaaS(Software as a Service)の試験的な導入や、それらの技術や考え方を導入した業務の進め方、またはシステム構築が進められている。 クラウドやSaaSというのは、企業が伸びるときに非常に力を発揮すると言われている。こういった新しいテクノロジーを使いこなすためにはIT投資のポートフォリオ、すなわち企業を伸ばすためにはどのようなITが必要になってくるのか、どこにメリハリを付けていくかを、今からしっかり考えておかなければならない。 IT分野では、5年、10年で技術革新が起きる。そうすると、IT部門の役割も変わってくる。現在は、お客さんの業務ニーズを聞きながら、BPM(ビジネスプロセス管理)やSOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方に基づいてシステムを作ることがIT部門の役割となっている。しかし、5年、10年先にクラウド/SaaSが主流になったら、システムは必ずしも作らなくてもいいし、自分たちで持たなくてもいい。そうなると、IT部門の役割は、企業経営のエラスティックな需要に応えるために、いろいろなところから必要なモノを持ってくる「プロデューサー」に変わっていくだろう。 |
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