顧客との接点での有用な情報源であり、満足度に大きな影響を与えるのが顧客からの苦情である。苦情を適切に処理するためには、そのための仕組みを作ることが重要だ。苦情に代表される顧客からのフィードバックを顧客満足の向上に結び付けるものとして、最近では苦情対応マネジメントシステムに注目が集まっている。



 ソリューションビジネスの顧客は、企業が提供する商品・サービスが、ビジネス上の問題点を解決する施策を提供してくれることを期待している。商品・サービスが期待を超えるものであれば顧客は満足し、それ以下であれば不満を感じる(図1)。

図1●顧客満足のために目指すもの
図1●顧客満足のために目指すもの
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 顧客の期待(ここでは「事前期待」と呼ぶ)は、個別の顧客や商品・サービスの利用場面で異なるだけでなく、時間の経過と共に高まっていく特徴がある。ライバルに一歩先んじた商品やサービスを提供しても、数カ月も立てば顧客はさらに高いものを期待するようになる。

 このような状況では単なる目先の不満の解消だけではなく、事前期待を先取りして顧客の満足を向上させることが重要だ。これが顧客からの信頼感や安心感、やがては事業上の成果へつながる。

 顧客の期待を理解するのは簡単ではない。意思表示を伴う顧客の声、真の期待を示した顧客の本音を知ることがかぎになる。

重要性増す苦情対応部門

 ソリューションビジネスに限らずBtoB事業では、営業以外の専門部署を設置して顧客の声を収集する企業が少なくない。収集した顧客の声に正しく対応し、満足度を向上させれば、顧客の囲い込みが可能になる。顧客とのビジネスを長期的に継続していくために、これは極めて有効だ。

 機械的に苦情を受理しマニュアルに従って処理する従来型のコールセンターのような手法では、顧客の声を収集し適切に対応するのは難しい。現在、顧客の声を収集する専門部署では、業務システムと連携して、効果的かつ効率的に顧客の要求に対応することが期待されるようになっている。

 本来なら営業担当者が顧客のニーズを収集し、社内のリソースを活用して、顧客満足度を高めるために行動すべきだが、個人の活動には限界がある。営業担当者個人ではなく、全社を巻き込んだ再発防止体制を敷いて対応するのが望ましい。

 顧客の声を収集・活用する際に有効なのが、「苦情対応プロセス」の採用である。コンタクトセンターを含めた苦情対応部門は、このプロセスの起点といえる。苦情対応部門は、プロセス全体の品質を管理・向上させていく司令塔として機能することが期待されている。

規格でプロセスを整備

 ソリューションビジネスの世界でも、苦情対応プロセスの重要性に対する認知は進んでいる。このための取り組みを組織的、体系的に推進する際に有効な手段が、企業のさまざまな活動の基準になる各種のマメジメントシステム規格である。

 顧客満足の向上に有用な規格の代表は、品質保証/品質管理に関するマネジメントシステム規格として知られるISO9001である。ソリューションビジネスの世界でも、ISO9001を取得する企業が増えている。

 ISO9001を適用することで、営業から企画提案、設計・開発、導入・運用、引き渡し、さらにアフターサービス、苦情対応といった引き渡し後の活動の各プロセスで、顧客の要求事項と継続的改善をより的確に把握できるようになるので、継続的改善を通じた顧客満足の向上が、達成しやすくなる(図2)。

図2●品質マネジメントシステムの概要
図2●品質マネジメントシステムの概要
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 しかし、ISO9001規格の要求事項がすべてを考慮しているわけではない。引き渡し後のアフターサービスや苦情対応などの記述が不足している。内容を詳細に確認しても、「苦情を含む顧客からのフィードバックに関して、組織は顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にし、実施すること」を要求事項に示している程度である。