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ダメな“システム屋”にだまされるな

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第29回 人材育成をしない“システム屋”は滅び行くのみ

2009/09/28

 経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 これまで、ダメな“システム屋”について忌憚ない意見を書かせていただきましたが、この連載コラムも残り少なくなってきました。そこで、これまでに書いてきたことをまとめながら、システム会社が今後どうするべきなのかについて、5つのポイントを述べたいと思います。

 まず、本当の「顧客第一主義」を考えるべきだということです。顧客であるユーザー企業にとって、システム会社と付き合うことのベストシナリオが何であるかを確認する必要があります。同時に、自分たちにとってその顧客と付き合うことのベストシナリオが何であるかを考え直すべきだと思うのです。

 「長期的に安定した信頼関係」「ウィン・ウィンの関係」といった抽象的で、誰にでも当てはまるようなものではなく、その顧客と自分たちシステム会社の組み合わせゆえに追求できる、追求すると面白いという具体的なシナリオがなければなりません。

 第2に、「ソリューション」とは何なのかをよく考えるべきだということです。誰のどんな問題を“解決”するのか、なぜそれを解決したいのか、ほかの誰かよりも自分たちがその解決に優れている理由は何なのか。そして、その問題を日本中で解決し続けたら、日本がどのように変わっていくのかを想像してみてほしいのです。

 「欧米で売れているから」とか「有力企業がこのパッケージソフトを担いでいるから」とか、ひどい場合には「人が余っているから売れれば助かる」ぐらいの動機で、ソリューションなどという大そうな表現を使わないでもらいたいものです。

「偽装請負」が問題化する日は近い

 第3に、本当に自分たちは「システム・インテグレーション(SI)」を目指すのかどうかを冷静に考えてほしいということです。

 システム・インテグレーションは受託案件ごとに大きなリスクを持つビジネスです。投資によって、リスクを回避あるいは縮小できるものではありません。広くて深い技術ポートフォリオを持ち、いざとなったら外部を含めて動員力を発揮できなければ事業として成り立ちません。

 これとは逆に「ある部品」「ある分野」「ある役割」に特化したシステム会社があってもいいはずです。端的に言えば「日付管理」プログラムに特化するイメージです。大規模なシステム構築プロジェクト全体では主役ではなく脇役になりますが、その部品が“大ヒット”する可能性だってあるのです。また、この役割であれば、投資によって競争力を強化することも可能です。大ヒット部品などを持つことができれば、主役以上に注目されることになります。

 第4に、「請負契約」の本当の意味を見直してほしいということです。本当に請負契約で仕事を進める考えならば、それに見合った品質とサービスを提供できる組織体制を備える必要があります。一方で、システム会社の提供するサービスが「人材派遣」であるならば、人材派遣契約に移行し、システム技術者本人の取り分をもっと増やすべきです。

 製造業の製造現場で指摘されている「偽装請負」が、システム業界でも問題となる日がまもなくやってきます。現実には今でも十分に問題だと思うのですが、より事態が深刻な業界に監督官庁とマスコミの目が向いているだけです。

 システム会社の経営者は、これを単に「大変だ」と騒ぐのではなく、まずは契約内容を実態に合わせ、次に自分たちがやりたいことが何であるかを考え直すべきなのです。固定客に人員を張り付けたいだけなら、派遣契約で十分というよりも、派遣契約のほうが顧客も、システム技術者本人も、そしてシステム会社も幸せなはずです。

システム会社に「ノウハウ」などない

 第5に、人材育成についてもう一度考え直してほしいということです。システム会社の資産は「人材だけ」といっても過言ではありません。システム会社の競争力を左右するような設備は存在せず、どこも特許などを押さえているわけでもありません。「ノウハウがある」というシステム会社の経営者もいると思いますが、そのノウハウは結局、一部の人の中に存在しているだけでしょう。

 人材を育成しない会社、育成しない業種が栄えたことは古今東西ありません。もし栄えたとしても、それは一時的なことではないでしょうか。「日本人全員がシステム技術者になってもまだ不足だ」と言われて大量採用に踏み切り、「35歳になったらシステム技術者として定年だ」と聞いて若いうちに使い切ろうと考えたとしたならば、その考えは改めなければなりません。

佐藤 治夫(さとう はるお)氏
老博堂コンサルティング 代表
1956年東京都武蔵野市生まれ。79年東京工業大学理学部数学科卒業、同年野村コンピュータシステム(現野村総合研究所)入社。流通・金融などのシステム開発プロジェクトに携わる。2001年独立し、フリーランスで活動。2003年スタッフサービス・ホールディングス取締役に就任、CIO(最高情報責任者)を務める。2008年6月に再び独立し、複数のユーザー企業・システム企業の顧問を務める。趣味はサッカーで、休日はコーチとして少年チームを指導する。

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