フリー・エンジニア
高橋隆雄 フリー・エンジニア
高橋隆雄

 イベントに参加して,特に最近,実感するのは『Asteriskを使っている人』の多さである。ブースに来て下さる方の多くが「すでに使っているのだが, ここはどうすればいいでしょうか?」とか,「今後,導入を検討しているのだが,この場合にはどうすれば?」といった具体的な質問を持ってこられる。表面的にはあまり流行ってないように思われがちなAsteriskではあるが,実は結構使われているというのを体感している。

 とりわけ多いのが,PBXのリプレース時期が近付いているため次を検討しているというユーザーだ。今さらアナログPBXを新規に導入するのは,と思っているユーザーは少なくないようだが,かといってメーカー製の高価なIP-PBXはちょっと,と考えるようで,そうなると候補として上がってくるのがAsteriskということのようである。

Asteriskの現状

 本家(米国)での更新頻度がここのところ上がっている。これはセキュリティ関連の問題に対応するものと,1.6系の更新頻度が上がっていることによる。

 日本国内では,これらの更新に合わせて日本国内向けのパッチを公開しているが,パッチの確認作業が追い付かないことも,ままある。これは内部構造的に言語依存部分が結構,細かく手が入っている(追加言語の埋め込みコードが増える)ためで,マイナーバージョンが変わっただけなのに古いパッチが使えないという状況が出てきている。

 このため,最近ではなるべく依存しない個所に日本語依存部分を埋め込むパッチに書き換えたのだが,いつまで持つことやら,といった状況だ。

 1.6系に関しては前回も触れたように,1.6.0系と1.6.1系が依然,並行して公開されている。これらの統合がどうなるのかは,今後を見守るしかないだろう。

 少し話題として大きいと言うか,面白い動きはAsteriskとJuliusを統合する動きが出てきたことである(VoIP-Info.jp掲示板)。これはAsterisk関連の開発を行うアイウィーヴの小西氏によるもので,オープンソースの高性能な汎用大語彙連続音声認識ソフトウエアであるJulius)をAsteriskに取り入れようというもの。これにより,Asteriskに日本語音声認識機能を持たせることができるようになる。なお,この部分(app_julius)に関してはオープンソースで提供されるので,今後のアナウンスをお待ちいただきたい。

 この機能がAsteriskに搭載されることにより,日本ではAquesTalkによる日本語音声合成機能,Juliusによる音声認識機能と,合成・認識いずれの機能も備えることができるようになる。Asteriskの応用範囲は単なる通話にとどまらないことの表れであると言えよう。

Skype for Asterisk

 ながらくベータテスト中であったSkype for Asterisk(SFA)がついに販売開始された(Skype For Asteriskのページ)。機能的にはベータで提供されていた通りで,SkypeをAsteriskの1チャネルとして扱えるようになる。使えるAsteriskのバージョンとしては,オープンソース(OSS)版のAsteriskでは1.4.x,1.6.xともに,Asterisk Business Edisionではバージョン C.x,およびAsteriskNOWとのことである。AsteriskNOWのバージョンについては明記されていないのだが,おそらく1.5系以降であろうと思われる。

 なお購入はDigium Directから直接でき,ライセンスの形で購入する(Skype For Asteriskの販売ページ)。価格は1チャネル当たり66ドル(90日のサポート付)である。なお購入時に注記すべき点があり,2つのサイトにそれぞれ5チャンネルずつSFAを導入したい場合には10ライセンスとして注文するのではなく,5×2で注文する必要があるようだ。