ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第11回と第12回は、「プロジェクトゴールとCSF(主要成功要因)」を取り上げます。今回はまず、なぜプロジェクトゴールとCSFがプロジェクトにとって重要なのかを整理してみましょう。

 みなさんはダイエットに取り組んだことがおありでしょうか。ダイエットに取り組むときには、目標を立てて臨むはずです。では、次の二つの目標では、どちらのほうが良い目標でしょうか。

 (1)「夏までに痩せたい」
 (2)「7月までに今より5kgやせて、今年の夏は新しい水着で海に行く」

 (2)のほうがより具体的で、達成すべき状態が明確ですね。漠然とした目標設定(ゴール)では、達成の基準がなく、日々の進捗が進んでいるのか遅れているのかが判然としません。それでは良い目標とは言えません。

 プロジェクトゴールも同じです。あいまいで玉虫色のゴールよりも、具体的な達成目標を示すゴールのほうが、プロジェクトにとっては有用です。プロジェクトにおいては、最初にゴールをきちんと定義することが成功への第一歩だといっても過言ではありません。

ゴールが大事な三つの理由

 プロジェクトとは、「ある目的のもとに結成される、時限的な組織活動」です。みなさんの会社でも、現状の問題を解決する、あるいは新たな挑戦を目的にして様々なプロジェクトを立ち上げて取り組んでいることでしょう。

 まず、プロジェクトにおいて「ゴール」を設定することの意味について、改めて整理をしてみましょう。

(1)成否の基準を決めておく
 プロジェクトには多くの人的資源と時間、コストがかかるわけですから、プロジェクト完了後には、その成否が問われることになります。プロジェクトのタスクは終わったものの、成功したのか失敗したのか良くわからない、という始末では何のためにプロジェクトに取り組んだのか分かりません。プロジェクトの成否を評価するには、達成の度合いが測定可能なプロジェクトゴールが必要です。

(2)周囲の期待値をすり合わせる
 プロジェクトの遂行にはプロジェクト外部にいる関係者の理解と協力が不可欠です。ゴールをあいまいにしたままプロジェクトを進めていくと、周囲はそれぞれに勝手な期待を膨らませ、やがてはプロジェクトに対して「こんなことは期待してなかった」「なぜ○○に対応しないのか」といった不満が寄せられるかもしれません。そうした事態に陥らないように、プロジェクト開始の時点で明確なゴールを示し、周囲の期待値のずれを取り除いておく必要があります。

(3)メンバーの心を一つにする
 プロジェクトは、様々な組織からリソースが集まる混成チームだといえます。例えばITプロジェクトの場合は、プロジェクトマネジャーを含むコアメンバー、情報システム部、ユーザー代表者、コンサルタント、開発パートナー、保守運用パートナー、製品ベンダーなど多くの参加者によってチームが構成されます。

 こうした混成チームを一つのチームにするためには、チームメンバーが常に同じ「絵」を見ていなければいけません。ゴールのイメージが共有できていなかったり、ゴールの達成が信じられないような状態では、プロジェクトを「やらされている」ことになり、メンバーの士気は低く、成功はおぼつかなくなるでしょう。