マイクロソフトから新OS「Windows 7」の提供がついに始まった。Windows 7はWindows Vistaの後継としてマイクロソフトが開発を進めてきたOS。コードを全面的に見直し,使い勝手を含めて大幅にブラッシュアップさせた。Vistaでの不評を挽回し,Windowsへの注目を改めて高めることを狙ったマイクロソフトの戦略製品である。

ユーザー向けへの製品提供が順次始まる

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 このWindows 7が開発の完了が宣言されて,最終的な完成品であるRTM版がリリースされたのは7月22日。そして,8月中旬からはいよいよユーザーへの提供が順次開始された。

 まず,最初に提供が始まったのはWindows 7向けのプログラムやシステムを開発する人たち向けである。これらの人たちを対象としたサービスであるMSDN(Microsoft Developer Network)やTechNet上で,8月12日から公開を開始。これらの会員は,サブスクリプションと呼ばれるオンライン・サイトからWindows 7の評価版をダウンロードできるようになった。

 実際の利用者に対しては,まず企業ユーザーを対象に9月1日から提供が始まった。「Open License」や「Select」といったボリューム・ライセンスのプログラムを契約している企業ユーザーが,9月1日からWindows 7製品版を入手して企業のプラットフォームとして利用できるようになった。同時に,NTTデータやデル,NEC,日立システムアンドサービスなどのパートナーからも,Windows 7を使ったシステム構築のソリューション・サービスが提供開始された。

■参考記事:Windows 7日本語版の開発者向け提供がスタート
■参考記事:Windows 7のRTM版がMSDNおよびTechNet会員向けに公開
■参考記事:マイクロソフト,Windows 7の法人向けライセンスを発売

一般提供を控え具体的なアップグレード情報を次々と提供

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 一般ユーザー向けへの幅広い提供も10月22日から始まる。この日から,量販店などの店頭にパッケージが並び,各パソコン・メーカーからもWindows 7プリインストール・パソコンが一斉に登場する。この一般への提供時期が近づくにつれ,移行や導入に関する具体的な話が少しずつ明らかになってきた。

 例えばWindows 7のライセンスでアップグレードの対象としているのは,Windows VistaとWindows XP。ただし,既存環境を引き継げるのはVistaからのアップグレードの場合のみで,XPからは基本的に新規インストールのみで既存の利用環境を引き継ぐことはできない。引き継ぎたい場合は,インストール作業後に「Windows 転送ツール」などを使って,改めて移行作業をしなければいけない。また,既存環境を引き継げるはずのVistaからも,条件によっては必ずしもアップグレードできるとは限らない。具体的には,32ビット版と64ビット版,あるいは移行前と移行後のエディションの違いによって,新規インストールしかできない場合がある。

 さらに,これまで当たり前のようにOSの標準ツールとして組み込まれてきたメール・ソフトが含まれていない。ただし,マイクロソフトとして無償メール・ソフトを提供しないのではなく,無料オンライン・サービス「Windows Live」の関連ツールである「Windows Liveメール」を,Windows 7のセットアップ後に無償で追加インストールできる。ただし,この際に手順を間違えると,Windows XPなどの既存Windowsからメールを移行できないといったケースがある。こうした製品の導入に関する注意点も,マイクロソフトから事前に説明されるようになった。

 新OSの一般的が近づくにつれ,徐々に市場は盛り上がっている。マイクロソフトでも,今回のWindows 7の発売に対して期待は大きい。そこで,これまでの新OSで実施した深夜発売のような熱狂的ファンを対象としたものだけでなく,一般ユーザーを対象にホームパーティーの開催を呼びかけるという新しいプロモーションを開始している。開催をする場合には,マイクロソフトの特製パーティグッズがもらえる。9月22日の24時が応募の締め切りなので,興味がある人は今すぐに応募していただきたい。

■参考記事:「XPからWindows 7へのメール移行は要注意」---マイクロソフトが説明会を開催
■参考記事:XP/VistaからWindows 7へのアップグレード方法、詳細が明らかに
■参考記事:Microsoft,各国語の「Windows 7 Enterprise」90日間評価版を無償提供
■参考記事:Microsoft,Windows 7の発売を記念したホームパーティーの開催を支援

最新のプラットフォームではWindows 7が最速OS

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 Windows 7の具体的な姿が徐々に見えてくるにつれ,その性能が気になるところだ。そこで,ITproでは,いち早くWindows 7の性能について検証作業を実施。その実力を明らかにした。

 その結果として,Windows 7は総じてWindows Vistaよりも高速といえる。ただし,2次元描画に限ればWindows XPに一歩譲り,数年前までの主流だったシングルコアCPUのハードウエアで比較的軽量なアプリケーションを使い続けるような場合は,Windows XPのほうが高速に処理できることがわかった。とはいえ,最近のパソコンでは当たり前となっているマルチコアCPUを使い,さらに今後増えるであろう64ビット・アプリケーションを利用するような環境では,Windows 7が最速のWindowsであることが証明された。このことからも,Windows 7が今後の主要プラットフォームとなることは間違いないだろう。

■参考記事:Windows 7の性能を検証,マルチコア最適化でVistaをしのぐ