米Microsoftは米国時間2009年9月15日,携帯型メディア・プレイヤー「Zune HD」と,Windows用ソフトウエア「Zune 4.0」をリリースした。これは,Microsoftからの次世代デジタル・メディア・プラットフォームの幕開けだ。

 戦略的に見ると,今回のリリースは,Zuneブランドの位置付けが変わる重要なターニング・ポイントでもある。もともとは米Appleの「iPod」と直接的に競合する製品として登場したZuneだが,その路線での業績は芳しくなかった。そこでMicrosoftはZuneを,同社の包括的なエンターテインメント・サービスのブランドへと脱皮させることにした。その中では,Zune HDのような携帯型プレイヤーはZuneブランドを構成する一要素に過ぎず,ブランドの中心ではないという位置付けだ。

 こうしてZuneブランドの主役の座を外れたZune HDだが,製品としての競争力はきわめて高い。小型軽量のフォーム・ファクタを採用し,iPod touchがなんだか大ぶりに感じられるほどだ。マルチタッチ式の有機EL液晶は美しく,どのApple製品の画面と比べても格段に優れている。加えて,HD動画の再生機能(別売のドックを使用),HDラジオ,直感的に操作できる新しいユーザー・インタフェースなども搭載した。iPhone風のWebブラウザとアプリケーション・ストアも備えている。しかも,Appleとは違い,アプリはすべて無料だ。

 Zune HDには16Gバイトのモデル(約220ドル)と32Gバイトのモデル(約290ドル)があり,色は黒とプラチナ。オンライン販売サイトの「Zune Originals」では,それ以外にも3色をラインナップし,さまざまなカスタマイズを加えることもできる。

 Windows用ソフトウエアのZune 4.0は,これまでのバージョンと同様に無償で利用できる。新機能として,コレクション全体を探し回らなくてもお気に入りのコンテンツに簡単にアクセスできるQuickplay機能,表示を小さくするミニ・プレーヤー・モード,Windows 7と連係する各種機能などを搭載した。オンライン・ストアの「Zune Marketplace」では,テレビ番組や映画のレンタルと購入を行える。そうしたコンテンツは,パソコンやZune本体に加え,今後数カ月のうちにはXbox 360でも楽しめるようになる。

 こうした今回のテコ入れでMicrosoftがiTunes連合に食い込んでいけるのかどうかは不透明だ。だが,同社としては,競合にひるむ気はないようだ。さらにこの先は,Zuneブランドを同社のあらゆる製品に展開していく意向だという。その手始めが,11月から始まるXbox 360向けのビデオ配信サービスだ(関連記事:コントローラを使わずにゲームを操作,MicrosoftがXbox向け新機能を発表)。今後は,WindowsやWindows Mobileなどでも,当然のようにZuneが顔を出すことになるのだと思う。なお,筆者のサイト「SuperSite for Windows(英語)」にも,製品のレビューなど,Zune HDやZune 4.0関連のコンテンツを掲載した。

関連記事(英文):

・「Zune HD Review, Part 1」(「Zune HDレビュー(その1)」)