携帯大手3社は,パケット定額プランの下限額を一斉に月390円に引き下げた。各社の狙いは見た目の安さで利用を促しながら,データARPU(ユーザー1人当たりの月間平均収入)の上昇という実を取ることにある。

 引き下げの口火を切ったのはNTTドコモ。2009年5月にパケット定額の下限額を月490円に下げた。この効果で,以前は月に60万~70万だった定額プランの新規加入者が5月以降は80万~100万に増えたという。山田隆持社長は「『490円なら利用する』と,店頭の反応が良くなった」と,加入の障壁を引き下げる効果があったと分析する。さらに「定額サービスに入れば,データ利用が少なかった人でも動画やコンテンツの利用が増えて,上限額まで到達する」傾向があり,下限額を引き下げたとしてもARPU向上につながるという。

 一方のKDDIは,8月1日から下限額がドコモよりも安い390円のプランを始めると5月下旬に発表。これに対抗し,下限490円の新プランを予定していたソフトバンクモバイルも下限を390円に改めて7月31日に開始し,ドコモは8月1日に下限を390円に下げた。

 ソフトバンクやKDDIは,下限額引き下げによる収益減を極力抑える仕掛けも組み込んだ。390円プランを選択するとパケット単価が0.105円となり,従来の0.084円よりも高くなる。この結果,より少ないパケット数で上限の4410円に到達する。

 ソフトバンクの孫正義社長によると,390円プラン導入前のユーザー分布は「3割が下限,真ん中あたりが3割,上限に達するのは4割」という。音声ARPUが減少する中,動画やコンテンツの強化によって上限額にいかに到達させるかが,事業者の最大の関心事となっている。