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欧米潮流@ネットワーク

日経コミュニケーション

米国通信政策の「チェンジ」,政権交代と変化の兆し

2009/09/25
出典:日経コミュニケーション 2009年8月15日号  p.73
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
エノテック・コンサルティングCEO 海部 美知 エノテック・コンサルティングCEO
海部 美知

 日本ではなかなか起こらない政権交代だが,米国では数年おきに与野党が入れ替わるのが普通だ。今年から共和党に代わって民主党が政権を担当している。

 2008年までの8年間,政権を受け持ってきた共和党は,もともと「大企業優先」の傾向が強く,事業統合の容認やアクセス開放義務の撤廃など,米AT&Tと米ベライゾン・コミュニケーションズの2大通信事業者に有利な政策を打ち出してきた。

 「競争促進」の民主党になったら,この政策がいつまでも続かないとは衆目の一致するところだったが,政権交代による変化がいよいよ表面化してきた。司法省が通信事業者の「独占的な力の濫用」を疑い,調査を開始したのだ。

 きっかけとなったのは,2009年7月7日に上院の反トラスト小委員会が司法省と連邦通信委員会(FCC)に提出した意見書。これはかつてAT&Tを分割し,マイクロソフトを追い詰めた「シャーマン反トラスト法」に基づいたものだ。

携帯電話は「独占」状態なのか?

 調査の成り行きで最も注目されている点は,携帯電話事業者が携帯端末メーカーとの間で締結する「独占販売契約」である。AT&TはiPhone,ベライゾンはBlackberry Stormなどを独占で販売しているが,これが「優位な立場を濫用して,消費者に不利益を与えているのではないか」という点だ。このほかに,携帯ネットワークでのSkype利用の制限,テキスト・メッセージ料金の固定化など,主に携帯電話関連の問題が取り沙汰されている。

 とはいえ,まだ調査の初期段階であり,訴追までの道のりは遠いとの見方が強い。AT&T,ベライゾン両社合わせても携帯電話のシェアは60%程度で,独占とは言い難い。また端末の独占販売契約が不当との立証は難しい。

 この動きは反トラスト法違反の裁判に持ち込むことよりも,「風向きが変わりますよ」という信号を業界向けに送り,これ以上の企業統合や,大手事業者の独占的振る舞いをけん制する意味のほうが大きいと言えるだろう。

司法副長官はネット分野のつわもの

 司法省は,あらゆる産業において「大手のパワー濫用」に目を光らせ始めており,米グーグルもターゲットになっている。ネット分野もその例外ではない。これを指揮するのは司法副長官クリスティーン・バーニー氏。彼女はクリントン政権の公正取引委員会(FTC)を経て,ブッシュ時代には弁護士事務所で多くのネット企業をクライアントに抱えていた。

 オバマ大統領自身もネットやITに理解が深いと言われるが,スタッフにも通信事業者やネット企業の内情を知り経験の深い人材を起用していることになる。米国の政府高官は,政権交代のたびに入れ替わるため,出たり入ったりする「回転ドア」とも揶揄される。一方,政権外で実地経験を積んだ人材を登用する道が開けているという面もある。通信事業者側にとって侮れない相手が登場したものである。

海部美知(かいふ・みち)
エノテック・コンサルティングCEO
 NTTと米国の携帯電話ベンチャNextWaveを経て,1998年から通信・IT分野の経営コンサルティングを行っている。シリコン・バレー在住。
 例年のように,日本で夏の休暇を過ごしている。不景気や選挙であわただしい夏だが,座禅を体験したり温泉につかったりなど,外国人旅行客の気分で,しばしの休養を楽しみたいと思っている。

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