ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニックやノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第9回と第10回は、「80・20(エイティ・トゥエンティ)」を紹介します。今回は実践編として、「80・20」を日々の課題に適用するためのコツを紹介します。

 前回は、「80・20(エイティ・トゥエンティ)」とはどのような考え方なのかについて、担当者と上司のやり取りから見ていきました。「80%の成果で満足してもらえ、20%の時間で達成できる。そんな都合の良いことがあるのだろうか」との声が聞こえてきそうです。ですが、当研究所では、これまでの経験において、「80・20」の考え方を適用することで、多くのプロジェクトを成功に導くことができました。

 「80・20」は、それほどに有効な考え方ですが、いざ自らのタスクに適用するとなるとなかなか難しいものです。あまりに漠然としていて手に馴染まないことでしょう。以下では、「80・20」を実践するためのコツを紹介します。

無意識に「80・20」で振る舞っていることも

 「80・20」を実践することは難しい、とお話ししました。プロジェクトで実践するといっても、中途半端に仕上げては怒られそうです。かといって、やりすぎては今までと変わりません。何を基準に80%と判断すれば良いのか、皆目検討がつかないでしょう。

 でもちょっと待ってください。無意識に振る舞っているかもしれませんが、日常生活の中で、みなさんがすでに「80・20」を実践していることが実は数多くあるのです。

 例えば、部屋の掃除を考えてみてください。人それぞれでしょうが、毎週末に1時間程度、掃除機をかけホコリを取り、たまったゴミを捨て、積み上がった雑誌や新聞を整理するなどを行なっているかと思います。その際、隅から隅までピカピカに磨き上げ、ホコリ一つ残らずキレイになるまで掃除することは稀ではありませんか。年末の大掃除で、時間をかけて丁寧に掃除することはあっても、毎週末にそこまで時間をかけていたら折角の休日が掃除だけで終わってしまいます。

 毎週末の掃除は、当面の日常生活を送るうえで問題ないレベルで短時間で済ませ、残りの多くの時間は好きなことに充てるのが通常であり、合理的であると思います。みなさんお気づきかと思いますが、この「当面の日常生活を送るうえで問題ないレベル」が正に「80・20」の考え方を実践している結果です。年末の大掃除が時間をかける100%の成果とするならば、毎週末1時間の掃除は80%の成果であり、かつ20%の時間で達成できることになります()。

 日常生活における「80・20」の例は、ほかにも数多くありそうです。

・読書から得た80%の知識は、読んだ書籍の20%から得たものである
・友人と遊ぶ80%の時間は、友人のなかの20%の親友と過ごしている
・宿題の80%は、20%の時間でできてしまった

 こうして見てみると、意外にも「80・20」を適用した行動を日常的に取っていることに気付かされます。そうです、「80・20」は、スペシャルなものではありません。だれもが実践しているくらい、極めて自然の行動であるとも言えます。