欧州連合(EU)の執行機関,欧州委員会(EC)は,独占禁止の規制に関し,さまざまな米国のIT企業を相手に断固たる対決姿勢を見せてきた。これまでにやり玉に挙がったのは,米Microsoft,米Intel,米Oracleによる米Sun Microsystemsの買収などだ。そしてこのたび,米Googleが新たな標的となった。書籍をスキャンしてデジタル化し,その利用を“民主化”するという同社のプロジェクト「Google Book Search」にECが目を付けたのだ。これに対し同社は,話し合いによる歩み寄りの姿勢を見せた。

 Googleは,同プロジェクトで著作権者が登録するレジストリ「Book Rights Registry」について,8人の理事のうち2人を米国以外の代表者の枠とすることを提案した。これは同プロジェクトに対する欧州での批判を沈静化することを狙ったものだ。同プロジェクトをめぐっては,米国で出版社などが訴訟を起こし,計画が存続の危機を迎えたが,利益を分け合うという内容で昨年和解が成立。Googleが1億2500万ドルを支払い,書籍の利用に応じて著作権者に報酬を支払うためのレジストリを立ち上げることになっていた(関連記事:Google,書籍本文検索プロジェクトで出版業界と和解)。

 同社はまた,欧州の書籍のデジタル化について,事前に出版社に連絡を取って許可を得た場合にのみ行うことをEUに約束した。

 だが,こうした手立てで十分かどうかは不透明だ。和解案に対する出版界の反応は,米国でもかなり否定的だったが,欧州の状況はさらに輪をかけた状態になっている。欧州の出版関連団体はECに対し,同プロジェクトの続行を認めたら,Googleによる「事実上の独占」が生じ,「米国の一企業が版権記録の国際モデルを支配することになる」との懸念を表明した。これらは,閉鎖的で保護主義色の強いEU内で対決姿勢を示す言葉だ。そして,Microsoft,Intel,Oracle/Sunに対する調査とは違い,今回はEUの動きが的を射ている可能性がある。

 Googleは,合意に向けた足がかりは米国の出版社と交わした和解から得られると話す。同社の公式ブログには次のようにある。「米国にしろ欧州にしろ,我々すべてが目指す目標には重要な共通点がある。それは,日の目を見なくなった膨大な書籍をよみがえらせることだ。長きにわたり埋もれてきた書籍を再発見できるようにすることは,米国だけでなく欧州の人たちにとっても必要なことである」。