2009年7月中旬に来日したグーグル創業者のラリー・ペイジ氏が、日本のメディア数社によるグループインタビューに応じた。このインタビューに参加した菊池隆裕日経コミュニケーション副編集長の質問に答え、ペイジ氏は企業使命(ミッション)の見直しを進めていることを明らかにした。(構成:菊池 隆裕=日経コミュニケーション)

グーグルには、広く知られた企業使命(ミッション)がある。
 「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスでき、使えるようにすること」──。
これまで、新しい技術やサービスを発表するたびに、多くのグーグル社員がこの言葉を口にしてきた。そこで、この目標がどこまで達成できたと考えているのか、ペイジ氏に尋ねてみた。

 「世界中の情報を整理する」という目標に対して、我々の取り組みはまだ初期段階にある。人々が本当に望む情報を提示するには、世界中のすべてのことを把握し、人々の質問を正確に理解し、最適な情報を探す必要がある。

 現時点で何%まで達成できているのか言うのは難しい。だが、情報の構造や言葉のより深い意味に対する理解は確実に進んでいる。 一方で、企業使命そのものを更新する必要がある。このところ取り組んでいる領域を包含できていないためだ。

従来の使命を超える新しい領域の代表例がパソコンや携帯端末のOSだろう。グーグルは2009年7月、パソコン用のOSと言える「Google Chrome OS」を発表。2007年11月には携帯機器向けのソフトウエア基盤「Android」を発表済みだ。従来の検索技術を軸としたWebアプリケーションの開発、あるいは開発支援に加え、クライアント側に活動の領域を広げている。当然、グループインタビューではChrome OSに関する質問が出た。

 数年前、セルゲイとエリック(共同創業者のセルゲイ・ブリン氏とCEO―最高経営責任者―のエリック・シュミット氏)を交えた会議で、ほとんどの出席者がブラウザ(Firefox)しか使っていないことに気付いた。このとき、「これはとても面白い」と思った。一般にコンピュータと言えば複雑なもの、たくさんのアプリケーションが動くものと考えがちだが、ほとんどの人が実際に使っているのはブラウザだけだ。

 Chrome OS登場後の新しい環境でブラウザとOSの境目はなくなる。多くのサービスをWeb上に実現するには、ブラウザをもっと進化させる必要がある。例えば、3次元グラフィックスの描画は従来ならソフトウエアを追加する必要があったが、今ではブラウザの一機能になっている。ブラウザ内でほとんどのことができれば、OSの機能は小さくできる。