個人から企業まで、専門家から初心者まで。グーグルが基盤サービスの利用者層拡大に向け、拡充を急いでいる。開発実行環境である「App Engine」は企業ニーズに合致した機能を相次ぎ追加。グーグルのWebサービスを「ワンタッチ」でWebサイトに追加できるようにもなった。

米ホワイトハウスと横浜YMCAの共通点

 米ホワイトハウスと横浜YMCA。両者には共通点がある。それはグーグルのPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)である「Google AppEngine(GAE)」を使って情報システムを開発し、成果を上げたことだ。

 ホワイトハウスが2009年3月に開発したのはオバマ大統領への質問をWebサイトで受け付けるシステム。一方の横浜YMCAは講習やキャンプなどの予約受付システムを開発した。いずれも処理能力のサイジングが難しいシステムだ。ホワイトハウスのシステムに対する投稿件数は2日間で合計360万件、利用者からのアクセス数は毎秒700件に上った。

 件数はここまでないものの、横浜YMCAのシステムは予約受付の開始初日、特に開始時間の30分だけにアクセスが集中する。「自動的に処理能力を拡張するGAEを使うことで、キャパシティ計画がきわめて難しい処理を乗り切れた」(開発を担当したサイオステクノロジーの栗原傑享執行役員)。

写真1●App Engine開発担当のフレッド・ソウアー氏
写真1●App Engine開発担当のフレッド・ソウアー氏

 情報システム構築の基盤として、グーグルのサービスが存在感を増してきた。GAEに加えて、地球の衛星画像サービス「Earth(アース)」や地図サービスの「Maps(マップ)」の利用も広がりを見せている。

 この勢いに弾みをつけるためにグーグルが取り組んでいるのが、利用者層の拡大に向けたサービスの改良だ。例えばGAEは、「開発者の登録数は2万人を超えた。ゲームやガジェット(単機能のWebアプリケーション)など、GAEで開発したアプリケーションも充実してきた」(開発担当のフレッド・ソウアー氏、写真1)。

 GAEを企業向けシステムにも広げるべく、企業ニーズを取り込んだ改良を相次いで実施。地理情報サービスはさらなる精度向上を図っている。グーグルの各種Webサービスを、プログラミング初心者でも簡単にWebサイトへ取り込めるようにする支援機能の提供も始めた。

「こちら側」との連携が進む

 「GAEの特徴は高いスケーラビリティ(拡張性)と本番システムをすぐに開発・稼働開始できること。これらの特徴をアピールして、さらに利用者を拡大していきたい」。ソウアー氏は、こう意気込む。

 GAEはグーグルが2008年5月に一般向けの提供を開始した。同分野で先行するのは米セールスフォース・ドットコムの「Force.com」。マイクロソフトも2009年11月に「Windows Azure」を開始するなど、ここへきて競争が増している。