代表的なユーザビリティ向上施策については,これまでの連載で理解していただけたと思います。さらに使いやすいシステムを構築するためには,第1回で紹介したアクセシビリティについても向上施策を実施することが重要です。

 なぜアクセシビリティを考慮する必要があるのでしょうか?

 日本では高齢化が進んでいます。総務省による2005年の統計によると,人口の約20%,5人に1人が65歳以上であるという状況にあります(平成17年国勢調査)。今後もさらに高齢化が進み,2013年には人口の25%以上,4人に1人が65歳以上になるという推計も出ています(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」)。

 皆さんが構築するシステムのユーザーには,高齢者の方々が含まれていることを考えてください。その方々にとって使いにくいシステムであれば,皆さんが想定したようにユーザーが増えることはないでしょう。高齢者の方々にとって使いにくいシステムは,ビジネスチャンスを失うリスクが大きいのです。

 高齢者の方々にとって使いやすいモノは,一般の方々にも使いやすいという考え方があります。WebサイトやWebシステムについても,同様のことが言えます。最初からユーザーに高齢者が含まれていることを想定し,高齢者にとって使いやすいWebシステムを目指すべきでしょう。

 また,皆さんの中には,目の不自由な方が,WebサイトやWebシステムを使わないと思っている方もいるのではないでしょうか。以前は,筆者もそのように誤解していました。実は,WebサイトやWebシステムは,目の不自由な方にとって,重要な情報源となっています。読み上げソフトを利用すれば,目の不自由な人も,WebサイトやWebシステムを利用することができるのです。

 ただし,読み上げソフトを利用することが前提となります。WebサイトやWebシステムが読み上げソフトに対応していなければ,使いにくいか,全く使えないことになってしまいます。これからWebサイトやWebシステムを構築する際は,読み上げソフトへの対応も考慮する必要があります。特に,利用者が特定しにくい一般大衆向けのWebサイトやWebシステムであれば,より多くの人が使いやすくなるような配慮が必要なのです。

 それでは,どうやってアクセシビリティを向上すればよいのでしょうか?

 アクセシビリティについては,国内外で指針が定められているため,その指針に準拠することをまずは目指しましょう。日本では,JIS X 8341-3がWebサイトやWebシステム向けのアクセシビリティ指針として定められています。