電気自動車の試験的導入が企業や自治体によって始まっている。それに合わせて、電気自動車に電気を供給する「充電スタンド」を設置する動きも広がっている。充電時間が数十分と長い電気自動車に対し、限られた数の充電スタンドで対応するためには、充電が必要な電気自動車を効率よく、充電スタンドに誘導する仕組みなどが必要になる。

 CO2削減の切り札とされる電気自動車(EV)。CO2など温室効果ガス排出量の大幅削減を求められている日本にとって、EVの普及はもはや国策だ。その電気自動車の普及に向けては、1回の充電で走行できる距離が短いEVの欠点を補えるインフラの確立が前提条件になる。

 充電により走行距離を伸ばす対策の一つが、EVのバッテリーを交換方式にすること。国内では、ベタープレイス・ジャパンが実験中である(関連記事)。2009年8月26日には、タクシーを使った実証実験を日本交通と共同で、2010年1月から開始することを明らかにしている。

 もう一つの方法は、バッテリーを充電するために必要な「充電スタンド」を多数設置し、必要な時に充電できるようにすること。ただしガソリンと違い、1回の充電には数十分程度と時間がかかるため、スタンドが受け入れられる電気自動車の数は、ガソリンスタンドより低下する。そのため、スタンドの空き情報を検索・提供する仕組みが求められている。

 充電スタンドをビジネスの面から考えれば、ユーザー認証や課金のための情報システムも必要になる。こうした電気自動車のためのインフラ構築に動き始めたのが、青森県や大阪府などの自治体と、新日本石油などのエネルギー会社、そしてNECやNTTデータ、日本ユニシスといったIT企業である(表1)。

表●電気自動車向け充電サービスの実証事業に参加する3社の取り組み内容
IT企業名NECNTTデータ日本ユニシス
共同実施企業/組織新日本石油自治体、企業など約10社青森県、大阪府、新日本石油
システムの実証目的急速充電器の運用・課金システムの運用企業間認証・課金システムの運用充電スタンド管理システムの運用と、他社管理システムとの相互連携を実現
概要新日本石油のガソリンスタンド用POSシステムを流用。8都県に設置した充電スタンド19カ所で運用し、販売業務上の課題を洗い出すすでに充電器を設置している企業が、有料でお互いの充電器を融通し合うことを想定。企業間の課金、精算を実現する新日本石油の充電器運用システムと、日本ユニシスの運用システムが連係。位置情報や空き情報をやり取りする

青森、大阪で充電スタンド管理を実験する日本ユニシス

 IT企業で先行するのが日本ユニシス。2009年度に青森県、大阪府、新日本石油と、それぞれ実証実験を実施する。ベースになるのはいずれも、充電スタンドを管理するためのソフトウエア。「smart oasis」の名称で、管理ソフトと充電スタンドを連携させる管理サービスを提供する計画だ。

 提供するサービスは大きく二つ。一つは、走行中に充電の必要に迫られたEVドライバー向けの充電スタンド情報提供サービスである。管理下にある充電スタンドから、充電開始時間と終了時間の情報を取得し、空き状況を把握。携帯電話やパソコン、カーナビゲーションシステムなどに配信する(図1)。

図1●スタンドの空き情報を配信できるように、日本ユニシスが開発する充電スタンド管理システムの概要
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