100年に1度の不況に直面したこの1~2年,不満と不安が入り交じった思いで働いてきた人も多いと思う。それは,給料や手当は減ったのに仕事は増えたという不満や,現在の職を失うのではないか,あるいは自ら辞めたとしても新しい職が見つからないのではないかという不安だ。

 だが,再就職支援会社の米Challenger, Gray&Christmasが発表した2つの調査結果は,そんなどんよりとした状況の中に,かすかな光をうかがわせるものとなった。それによると,米国におけるIT技術者に対する将来的なニーズは決して暗くはないようだ。

調査結果1:IT分野は今後有望

 企業の人事担当者150人を対象とした調査で,さまざまな職種の中で大学の新入生が手がける研究分野として最適と思うものを尋ねたところ,コンピュータ科学とIT(情報技術)が第1位に輝いた。第2位はエンジニアリング,第3位は医学/医療だった。

 調査結果の発表資料で同社は次のように述べている。「米労働統計局の予測では,今後10年間で特に急増する職業としてコンピュータ科学者を挙げている。コンピュータ科学者と情報科学者の雇用は,2006~2016年の期間で22%増える見通し。ネットワーク・システムとデータ通信の分析に関しては,53%増と予測される」。

調査結果2:企業の人員削減が縮小傾向に

 米国の勤め人にとって,9月から年末までは,わが身に一抹の不安を感じる期間である。企業はこの時期に翌年の予測と予算編成を行うため,予算見直しのための削減策に踏み切ることがよくあるからだ。そして言うまでもなく,企業がコストを減らすには,人員削減が最も手っ取り早い。

 この点でも明るい話題が出た。同社の調査結果によると,人員削減は年初から縮小傾向にあるという。2009年1~4月の削減数は計71万1100人だったが,5~7月は計28万2948人だった。これから年末までの人員削減も,これと同水準か,あるいは減少すると同社は予測している。

 同社CEOのJohn A. Challenger氏はこう話す。「経済が上向き始めたことを示す兆候は次々と表れている。雇用が一気に増えて,米国の2000万人近い失業者が次第に職に就けるようになると予測するには時期尚早だが,人員削減のペースは今後も下がっていく可能性が高い」。

 つまり,現在職に就いているIT技術者にとっては,職を失うリスクは日に日に低くなっているということだ。また,失業中の人にとっては,今は新しい知識や技能を身に付ける絶好のチャンスかもしれない。今後企業が再び採用へと舵を切るときに,優位に立つことができる。あるいは,IT企業で非常勤という形で働かせてもらうのもよいかもしれない。今,人手は足りないが,コストをかけて正社員を雇うまでの余裕はない,という企業も少なくないはずだ。

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