経営者にとって、情報システムは頭痛の種になりがちだ。業務に必須だが投資に見合った効果が出るとは限らない。ほかの設備投資に比べて専門的で難解でもある。

 野村総合研究所で約20年間勤務した後に、人材派遣大手スタッフサービスのCIO(最高情報責任者)を務め急成長を支えた著者が、ベンダーとユーザー両方の視点から、“システム屋”の思考回路と、上手な付き合い方を説く。

 第25回第26回では、このままでは“システム屋”の給料は下がり続けることと、その事実に対してシステム会社の経営者が有効な手を打っていないことを指摘しました。

 この状況で収入を維持するためには、システム会社に勤務する“システム屋”個人が、一定の向上心と勉強量を維持する必要があります。

 大きなプロジェクトの一部分を担当している人が、より広い範囲を担当したい、より上流工程を担当したいと思うのは自然であり、おそらく大半のシステム屋の願望でもあるでしょう。問題は、そのために何の勉強をしていますか、あるいは、そもそも勉強していますかということです。

休日は1日6時間の勉強?

 私が所属していたシステム会社が、コンサルタントとアナリストで構成される会社と合併した時、あるアナリストから聞いた話を紹介します。彼は平日なら2時間、週末や祝日なら1日6時間勉強するというノルマを自分に課していました。勤務時間中のことではなく、帰宅してからの勉強時間です。この話を聞いた時点で私は絶句寸前でしたが、彼が「システム部門の人はどのぐらい勉強しているのですか」と私に聞いてきた時、返答に窮してしまいました。

 システム屋の大半は夜遅くまで残業し、残業の後は同僚と飲みに行くことが多かったので、とても勉強しているようには思えません。私自身も、土日のいずれかを勉強に充てていましたが、それでも2時間か3時間程度だったように思います。「勉強しなければ生きていけない、付加価値を創造できない」という強い意識を持つコンサルタントやアナリストと比較すれば、システム屋は不勉強だといわざるをえないと思います。

 別の事例を紹介しましょう。私の知人に、インドでシステム会社を経営している人がいます。その人はインドの最難関大学を卒業した後、米国の名門大学に留学し、米オラクルに勤務した後、インドに戻って自分の会社を立ち上げました。実際に接してみて、彼自身や、彼の会社に所属する“システム屋”たちの勉強熱心さには驚きました。

 インドは人口が多いだけでなく、民族の数も多く、言語も多数あります。インドの国内各地から彼の会社に集まった若者たちは、公用語であるヒンディー語を話すのは当然としても、誰もが英語を使おうと必死です。英語が使えれば、自分の民族語とヒンディー語に加えて英語ということになるので、3つの言語を操ることになります。社長の彼にいわせると、「世界中どこでもビジネスなら英語であり、コンピュータ関連用語もすべて英語なので、英語さえできれば十分。逆に英語ができなければ下級プログラマーを卒業することすらできない」ということです。どうでしょう、日本の“システム屋”は英語を使おうとしているでしょうか。