子供が疑似的に職業体験できる施設として、開業以来急成長を遂げるが、2年目の今年4月、従業員による子供へのわいせつ事件が明らかになった。マスコミの非難を浴び、企業存亡の危機に動揺する社員を支えたのは、事業の「コンセプト」に寄せる経営トップの絶対的な自信だった。 (文中敬称略)<日経情報ストラテジー 2008年8月号掲載>

プロジェクトの概要
 2006年10月に開業した「キッザニア東京」は、教育とエンターテインメントを融合した新しい子供向け施設として話題を呼び、目標を大幅に上回る来場者を集める。目玉は職業体験。56社のスポンサー企業が提供する「アクティビティー」を通じて、子供が疑似的にその会社の仕事を体験できる。当初はなかなかスポンサーが集まらなかったが、CSR(企業の社会的責任)やブランド浸透面での効用が徐々に理解されるようになった。
 順風満帆に成長を遂げていたキッザニアを2008年4月、予期せぬアクシデントが襲う。従業員による来場児童へのわいせつ行為が明らかとなり、警察を巻き込んだ「事件」となった。安全E管理体制を見直す一方で、社長の住谷栄之資は事件を契機にキッザニアのコンセプトの強さと、それを支えた社員の愚直な努力を改めて痛感する。
2歳から15歳までの子供たちが、ガソリンスタンドや自動車ディーラーなど様々なパビリオンでスーパーバイザーの指導を受けながら職業体験をする (写真:いずもと けい)
2歳から15歳までの子供たちが、ガソリンスタンドや自動車ディーラーなど様々なパビリオンでスーパーバイザーの指導を受けながら職業体験をする (写真:いずもと けい)
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 キッザニアでわいせつ事件─。

 2008年4月2日、子供向けエンターテインメント施設「キッザニア東京」を運営するキッズシティージャパン(東京・千代田)は、同年2月未に来場した子供が施設内でアルバイト従業員に体を触られるという事件が発生したことを明らかにした。

 東京都江東区の大型商業施設「アーバンドックららぽーと豊洲」に2006年10月オープンしたキッザニアは、職業体験ができる新しいタイプのエンターテインメント施設として大きな話題を呼んだ。56社のスポンサー企業が出展するパビリオンでは、子供たちがその会社の業務の一部をリアルに経験できる「アクティビティー」を提供する。FM放送「J-WAVE」のスタジオでDJを務め、モスバーガーでハンバーガーを作り、三菱自動車のディーラーで来店客に車の説明をするといった具合だ。