海外製品は対応済みが主
IFRS対応を効率化する機能では、欧州での経験を得ている海外製品が進んでいるのは間違いない(表1)。
製品名(販売会社) | IFRS への対応状況 |
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海外製品 | |
Oracle E-Business Suite、Hyperion Financial Management (日本オラクル) |
コンバージェンス、アダプションともに対応済み。コンバージェンスに必要なパラメータ設定方法などはWebサイトで提供。アダプションは、「Oracle E-Business Suite R12」以降のバージョンで複数元帳の機能などを提供。セグメント向けのテンプレートも用意 |
SAP ERP、BusinessObjects Financial Consolidation (SAPジャパン) |
コンバージェンス、アダプションともに対応済み。コンバージェンスに必要なパラメータ設定方法などはWebサイトで提供。アダプションは、「my SAP ERP 2004」以降のバージョンで、複数元帳の機能などを提供。連結会計パッケージではIFRS対応用テンプレートを用意 |
国産製品 | |
COMPANY (ワークスアプリケーションズ) |
コンバージェンス、アダプションとも保守サポート内のバージョンアップで対応。09年度から始まるIFRSの任意適用を希望する場合、サブシステムを必要に応じてバージョンアップする |
GRANDIT (インフォベック) |
コンバージェンスは対応中、アダプションは検討中。コンバージェンスは項目によって新モジュールを有料で提供したり、保守サポート内でバージョンアップする。アダプションは12年をメドにバージョンアップで対応予定 |
OBIC 7ex (オービック) |
コンバージェンスは対応中、アダプションは検討中。コンバージェンスは項目によって有償のバージョンアップなどを実施。顧客に非上場企業が多いため、アダプションについては影響範囲を情報収集中 |
ProActive E2 (住商情報システム) |
コンバージェンスは対応中、アダプションは検討中。コンバージェンスはパッチの提供やバージョンアップで対応予定。項目によっては有償の可能性もある。アダプションは影響範囲を情報収集中。顧客の利用方法を想定した上で、製品の機能として対応する予定 |
SuperStream (エス・エス・ジェイ) |
コンバージェンスは対応中。アダプションは検討中。アダプションは情報収集により詳細を検討中だが、設計に大きな変更の必要はないとみている |
国産製品はIFRSへのコンバージェンスには追従している。OBIC7exやProActive E2、GRANDITのほか、エス・エス・ジェイの「SuperStream」などのERPパッケージはコンバージェンスに対応するために、新モジュールの追加やバージョンアップを順次進めている。
コンバージェンスへの対応が通常の保守サポート内か別料金となるかは、開発元の企業の方針や対応の内容によって異なる。工事進行基準のようにプロジェクト管理モジュールのみが影響を受ける、10年4月以降から適用になる「資産除去債務」など固定資産モジュールのみが影響を受けるといった場合は別料金のケースが多いようだ。
海外製品はコンバージェンスへ対応できる機能を提供済み。コンバージェンスの各項目に応じた会計処理を実現するためのパラメータ設定の方法などをWebサイトで公表している。
IFRSの全面適用に向けた対応について、国産製品の開発元は「パッケージソフトである以上、対応すると顧客に説明している」と口をそろえる。
ERPパッケージ「GRANDIT」を開発するインフォベックの山口俊昌取締役は「2010年に要件を固め、開発を本格化させたい」と話す。IFRSの全面適用にはメジャーバージョンアップで対応する予定だ。11年にベータ版を先行出荷し、12年に「本格的に販売したい」(山口取締役)。
「財務諸表の表示が変わるなど、アプリケーションのロジックを書き換える部分が出てくる」。SCSの五月女リーダーは、IFRSの全面適用への対応をこうみている。同社はIFRSの全面適用が正式に決まる12年よりも前に「対応が必須の機能から現行製品に追加していく」(同)考えだ。
SCSとインフォベックは顧客企業がIFRS対応を進める際のコンサルティングにも力を入れる。システムの構築だけでなく、全社的なIFRS対応を支援する。SCSは社内のコンサルティング部門と協力し、IFRS対応支援サービスを提供する予定だ。インフォベックも4月7日、会計に強いコンサルティング会社と協業を始めた。
プロジェクト方針の決定が先
IFRSへの対応にパッケージソフトが効果的とは言え、単純に導入すればいいわけではない。「まず経営層がIFRS対応のプロジェクト方針を決めることが重要だ」とアビームの藤田プリンシパルは主張する(図5)。
目指すのは全社的な業務の標準化か、目先の制度対応にとどめるのか。そのために、連結グループ全体の会計関連システムを統一するのか、連結会計パッケージを導入するのか。全社の方針によって、選ぶべきパッケージの要件が大きく異なるからだ。
特に自由度の高いIFRSでは、経営陣の決定がプロジェクトを大きく左右する。SAPジャパンの桐井健之GRC/EPM事業開発本部長も「どれだけIFRSに基づいた会計処理を実現するために必要な機能がそろっていても、企業の方針が決まらないと導入は難しい」と話す。
IFRSへの対応は単なる情報システムの改変にとどまらない。グループ全体の情報システム戦略が改めて問われるのは間違いない。