「10年前に会計関連システムを自社で構築した。現在も使い続けている」「ERPパッケージを利用して会計関連の情報システムを統合した。自社の業務に合わせるためにアドオン(追加開発)を多用している」「連結グループ企業のシステムは各社に任せている」。

 財務会計を中心とする会計関連の情報システムが、こうした状態の企業は要注意だ。日本企業が利用している会計基準が「国際会計基準(IFRS)」になるからである。

 金融庁は2009年2月4日に、日本の会計基準にIFRSそのものを採用する「全面適用(アダプション)」に向けた文書を公開。早ければ2015年に、日本の会計基準としてIFRSを全面適用すると表明した。連結のみでIFRSに基づいた財務諸表の作成を求める見込みだ。

 IFRSの全面適用に伴い、会計関連システムを変更する必要が生じる。それには「パッケージソフトの活用が欠かせない」と、アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部の鈴木大仁パートナーは話す。

対応効率化でパッケージに注目

 IFRS対応にパッケージソフトが有効なのは、IFRSが現行の日本の会計基準と大きく異なり、情報システムの対応に手間がかかるからだ。

図1●国際会計基準(IFRS)への対応を効率化するためにパッケージソフトは有効だ
図1●国際会計基準(IFRS)への対応を効率化するためにパッケージソフトは有効だ
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 IFRSは、会計処理の詳細は企業が決める「原則主義」を採用、連結グループ全体で作成する連結財務諸表を重視、といった特徴を備える。会計処理の方法が詳細に決まっていて、企業単体と連結の財務諸表にあまり相違がない日本の基準とは大きく異なる(図1)。

 IFRSへの対応は既存システムを改変したり、新規にシステムを構築することでも可能だ。ただ、IFRSに対応したパッケージソフトを利用したほうが対応の手間は軽減できる。そもそも制度変更の多い財務会計はパッケージソフトが向く分野だ。

 SAPジャパンや日本オラクルなどの製品は、日本に先行して05年にIFRSの全面適用が始まった欧州で販売している。そのため「IFRSに基づく会計処理を実現するための基本的な機能を備えている」(アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部の山本照晃シニア・マネージャー)。

 IFRSの全面適用が現実味を帯びるにつれて、パッケージソフトに対する企業側の期待が高まっている。「最近ではIFRSへの対応状況を尋ねる文言がRFP(提案依頼書)に必ず入る」。ERPパッケージ「ProActive E2」を販売する住商情報システム(SCS) ProActive事業部営業推進部の五月女雅一ビジネス推進チームリーダーは証言する。同社はIFRSの全面適用で製品にどのような影響が出るか、情報を収集している最中だ。

 海外製品に比べ、国産製品はIFRSの全面適用に向けた対応は様子見の段階。一方で、IFRSと日本の会計基準とのコンバージェンス(収れん)への対応には着手している。コンバージェンスはIFRSと日本の会計基準との差を埋めるための取り組み。09年4月以降に始まる事業年度から適用になる工事進行基準はその一例だ。国産製品もコンバージェンスへの対応により、IFRSを実現するための機能をある程度備えることになる。