会社の経営トップである社長は、当然のことながら絶対的な権力を持っています。従って、社長の了解を取り付けるというのは、どんなプロジェクトを進めるに際しても重要であることは間違いありません。

 こんなことは、誰に言われるまでもなく、どなたもがご承知のはずだと存じます。が、本当に社長ベッタリで、ことがうまく進むのかというと、そうでもないのです。

社長が“裸の王様”になることが多いのは、会社の仕組みのせい

 一般に社長は“裸の王様”になることが多く、従業員は「社長は会社の上っ面だけしか理解していない」と感じているケースが多いのではないでしょうか? 実は私自身も長年そのような考えを持っており、それが事実であるという具体的事象に遭遇したことも数えきれません。しかし、それは社長が愚かであるということではありません。

 会社の仕組みがそうさせるのです。社長に真実が伝わらない仕組みになっているからにほかなりません。過去、私が仕えた社長の中で、就任時に「バッドニュース ファースト」という経営方針を打ち出した方がおられました。しかし、こういう方針を打ち出されると、社内は逆に「グッドニュース オンリー」という思考に陥ってしまいます。

 本来の目的は、悪いニュースは早めに察知して軽微なうちに解決しようというものなのでしょう。ですが、小さな問題はあえて表面化させず自部門で解決してしまおうと考える管理者から出てくるバッドニュースは軽微なものでは無く、手に負えなくなった大問題だけになってしまいます。せっかく問題の芽を小さなうちに摘もうと考えた経営トップへのダイレクト・コミュニケーション・ツールは、小さな成功の自慢話を社長に知らせるツールと化してしまうのです。

 この例のように、社長は社内の問題や課題を知りたいと思う気持ちが非常に強いのですが、いかんせん役員といえども、バッドニュースや社長の考えと反する意見を社長に伝えるとなると、相当な勇気が必要なのです。しかし、少なくも社長という地位に就く能力を持っておられる方々は、表面的にはどうあれ、バッドニュースや自分の考えと違う意見を聞くことに対して非常に積極的です。

 もちろん例外もありますが、自分と違う意見を封殺したり、違う意見を持つ人間を排除したりする社長が存在する企業の将来は知れたものですから、そのような方々を排して、大勢を占める普通の社長像との接し方を論じてみます。