短時間に集中的な雨が降る「ゲリラ雷雨」。昨今の温暖化の影響からか、日本での発生件数が急増し、2008年も全国各地で大きな被害を与えた。しかし、ゲリラ雷雨のように局地で突発的に発生する気象状況は従来の観測システムではとらえられない。そこでウェザーニューズは、会員からの口コミ情報を基に天候を予測するサービスを提供している。携帯電話から寄せられる情報を迅速に分析する同社の情報システムが、それを実現した。

 「隊員諸君、エリア内では怪しい雲の報告が到着。監視体制を強化し、報告を頼む。隊長より」――。ウェザーニューズの「ゲリラ雷雨防衛隊」に入隊すると、時々このようなメールが携帯電話に送られてくる。

 隊長からのメールを受け取ったゲリラ雷雨防衛隊の隊員は、ウェザーニューズのWebサイトにアクセスし、「頭上の雲の色は?」「雲のある方角は?」「雲の成長具合は?」といったいくつかの問いに選択式で回答。さらに自由記入欄にコメントを入力する。会員が入力した情報は、GPSを使って取得した位置情報とともに、サーバーに送信される(図1)。

図1●「ゲリラ雷雨防衛隊」は、約2万人の隊員が寄せる情報を基にゲリラ雷雨を予測し、メールで通知する
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 これは、ゲリラ雷雨に関する情報提供するサービス「ゲリラ雷雨防衛隊」における情報収集の仕組みだ。気候情報配信会社ウェザーニューズが手がける。既に2万人を越える利用者が、有料でゲリラ雷雨防衛隊の会員になっている。会員は、ゲリラ雷雨発生を知らせる予報を受け取るだけでなく、ゲリラ雷雨の発生につながる情報を集める“観測者”でもある。隊長からの協力要請にこたえるだけでなく、ゲリラ雷雨を発生しそうな雨雲を見つければ、携帯電話を使ってそれを報告する。

局所的ゲリラ雷雨の発生を約1時間前にも通知

 短時間に集中的に雨が降るゲリラ雷雨。問題は、局所的な動きの予測が難しいことである。気象レーダーやアメダスは10分単位で気象を観測しているが、ゲリラ雷雨はそれでは追いつかないほど短時間で発生する。気象レーダーが雨雲を観測してからでは、すでに手遅れだ。

 この気象観測技術の限界を、携帯電話やパソコンを使った口コミ情報を元に、乗り越えようとするのがゲリラ雷雨防衛隊である。2008年に始めて実施した際には、1万人の隊員が参加した。サービス期間の2カ月に東京で172回のゲリラ雷雨を捕捉したが、その7割超に当たる132回は、口コミ情報によって発生を事前予測した。平均38分前にはゲリラ雷雨発生に注意を促すメールを隊員に送信できたという。

 2年目の2009年は、倍の隊員が参加する。7月30日までに、首都圏で発生した33回のゲリラ雷雨の84.8%を事前に捕捉。事前の注意喚起メールは平均54分前に送信するなど、前回よりも精度が向上している。

 予測の精度は、会員が寄せる口コミ情報は多いほど上がる。しかし2万人を超える会員からの情報を、短時間で的確に分析するのは簡単ではない。会員からの報告内容はテキストだけでなく、動画や画像も含まれるからだ。ブラウザによる回答時に、メール送信のリンクをたどると、ブラウザから報告したテキストと関連付けるためのIDが記入されたメール本文が現れる。これに、画像や動画を添付して送信する。