ソリューションプロバイダの営業担当者の姿勢で常々、疑問を感じるところがある。発注して開発プロジェクトが立ち上がると、途端に顔を見せなくなる営業担当者が多いということだ。
確かに、開発プロジェクトが立ち上がると開発担当のSEとやり取りする機会が増える。営業担当者はこうした状況に、「自分が顔を出さなくても顧客との関係を維持できる」という安心感を抱いてしまうのかもしれない。
これは間違った考えだ。開発が始まった後でも、定期的に訪問してもらえると助かる。SEではなく、営業担当者でなければ相談できないことがある。
SEへの相談は、システムの改修や不具合に関することが中心になる。こうしたことは、営業担当者に相談するよりも担当するSEに相談したほうが、解決策を迅速に提示してもらえる。
営業担当者に相談したいのは今、開発を進めているシステムについてではない。今後、当社が導入すべき、あるいは検討すべきシステムに関することだ。
例えば、2~3年前に話題になったJ-SOX対応も、その一つだった。東証一部に上場する当社にとって、J-SOX対応は検討しなければならないテーマだ。
当時、多くのベンダーやSIerが、J-SOX対応をうたった製品やソリューションを提供し始めていた。そのなかから、当社に最適な製品やソリューションを見極める必要があった。この見極めを、営業担当者に手伝ってもらいたいのである。
同じことはセキュリティについてもいえる。セキュリティは考え始めるときりがない。当社が打つべき強化策は何で、そのためにどういった製品やソリューションを導入すればいいのか、といったことを助言してほしい。
製品やソリューションの情報を収集するだけなら、雑誌やネットを活用すれば済む。だが、当社がどこまで手を打てばいいのかの判断には、専門家であるソリューションプロバイダの言葉が頼りになる。
こういった相談は、既に取り引きのあるソリューションプロバイダに頼みたいと考えるものだ。時間貸駐車場「タイムズ」の運営を手掛ける当社の業務や現状のシステムについて理解していなければ、当社に最適な製品やソリューションを選定するのは難しいからである。
先に挙げたJ-SOX対応の例で言えば、現状は運用でカバーすべき業務プロセスと、システムでカバーすべき業務プロセスを分け、それぞれについて対応を施している。どこまでをシステムでカバーすべきなのかは、当社の業務をよく知るソリューションプロバイダでなければ、答えられないだろう。
残念なことに、新規の取引先と大差ない回答しかできない営業担当者もいる。こちらが持ち掛けた相談に対して、自社で手掛ける製品やソリューションばかりアピールしようとするのである。
当社が知りたいのは、これらの製品やソリューションが、本当に当社に必要なものなのかどうかである。必要だというのなら、どう活用すればいいのかを教えてほしい。
現在、他の顧客からどういった問い合わせが増えているのかも教えてもらえるとありがたい。当社は、同業他社に先駆けてサービスのIT化を進めてきたつもりだ。同業他社だけでなく異業種他社の動きも、今後のIT戦略を検討するうえで有用な情報になる。(談)