「パンデミック対策検定」では,新型インフルエンザやワクチンの基礎知識から,人事・労務,コンプライアンスの実務面まで,幅広い分野にわたり計20問を出題します(各10点,200点満点)。パンデミック対策を計画する立場にある方はもちろん,一般部門の責任者やリーダーも理解しておきたい内容です。ぜひ挑戦していただきたいと思います。

 現在,私たちが直面している新型インフルエンザの脅威は,その規模においても,拡大のスピードにおいても人類にとって未知ものです。従ってガイドラインや法制度などに,まだ考慮されていないと思われる点があることは仕方のないことだと思います。「パンデミック対策検定」にはあえてこのような問題をいくつか取り入れています。難しいけれども決して避けて通れない問題です。今回の検定が,これらの問題への対策を社内で議論するきっかけになれば幸いです。

監修:危機管理アドバイザー(スタンダード&プアーズ Vice President)佐柳恭威

新型インフルエンザ関連の基礎知識

【第1問】
 カゼ(普通感冒)とインフルエンザ(流行性感冒)の関係について,正しい説明は次のどれでしょうか。

A. カゼが重症化したものがインフルエンザ
B. インフルエンザはカゼの一種
C. カゼとインフルエンザは全くの別物


【第2問】
 新型インフルエンザに感染した後で,新型インフルエンザワクチンを接種しました。この場合,治療効果は期待できるでしょうか。

A. 効果は期待できない
B. 接種しない場合よりも回復が早い
C. どちらとも言えない


【第3問】
 新型インフルエンザウイルスの毒性は,時間経過とともに,どのように変化するでしょうか。

A. 強まる傾向がある
B. 弱まる傾向がある
C. どちらとも言えない


【第4問】
 「タミフル」や「リレンザ」などの抗インフルエンザ薬には,どのような効果があるでしょうか。

A. ウイルスを直接攻撃し,死滅させる
B. 体内の抗体を活性化することで免疫機能を高める
C. ウイルスの増殖を阻害する


【第5問】
 新型インフルエンザの「プレパンデミックワクチン」とは,どのようなものでしょうか。

A. 新型インフルエンザへの変異が予想されるウイルスを用いて開発する治療薬
B. 新型インフルエンザへの変異が予想されるウイルスを用いて開発する予防薬
C. 新型インフルエンザへの変異が予想されるウイルスを用いて開発するもので,治療薬でもあり予防薬でもある


【第6問】
 新型インフルエンザ向けの「パンデミックワクチン」はどのように作られるのでしょうか。

A. 過去の流行を参考に,パンデミックを起こすヒト・インフルエンザウイルスを予想してパンデミックが起きる前に製造する
B. パンデミックが起きてから,その原因となったヒト・インフルエンザウイルスを元に製造する
C. 鳥や豚のインフルエンザウイルスを元にパンデミックが起きる前に製造する


【第7問】
 インフルエンザワクチンを一度接種すると,免疫効果はどのくらい持続するでしょうか。

A. 多くの場合,一生持続する
B. 多くの場合,1年程度で接種前の水準に戻る
C. 多くの場合,6カ月程度で接種前の水準に戻る


新型インフルエンザの感染予防策

【第8問】
 新型インフルエンザの感染予防策として,消毒用エタノールなどが有効です。では,消毒用エタノールなどアルコール類を事前に備蓄しようとする場合,どのような制限を受けるでしょうか。

A. 販売を目的としない一般企業と個人の場合,特に制限はない
B. アルコール含有量70%以上のものは消防法(関連規則を含む)と火災予防条例などの量的備蓄制限を受ける
C. アルコール含有量60%以上のものは消防法(関連規則を含む)と火災予防条例などの量的備蓄制限を受ける


【第9問】
 「タミフル」や「リレンザ」などの抗インフルエンザ薬をインターネットで購入し,備蓄することについて,正しい説明は次のどれでしょうか。

A. 薬事法により,いかなる販売も購入も禁止されている
B. 購入者が会社であり,従業員の福利厚生目的の範囲内であれば許容される
C. 国内未承認薬として個人が自分の利用を目的に個人輸入する方法があるが,健康を害するリスクが極めて高い


人事・労務上の対策

【第10問】
 海外出張などから帰国した従業員に対して,社内への感染防止のため,10日間の出勤停止を会社が指示しました。この際,従業員の給与はどうなるでしょうか。

A. 業務命令による自宅待機と考えられるので,自宅で仕事をするかどうかにかかわらず出勤したものとみなされ,規定通り100%支払われる
B. 業務命令による自宅待機であり,自宅で法定労働時間相当(たとえば7時間/日)の仕事をした場合は100%の給与が支払われるが,仕事をしなかった場合は,通常の60%まで減額される可能性がある
C. 社内感染防止のための措置であり,従業員の意思とは関係なく有給休暇として扱われる。給与は100%支払われるが,年次有給休暇は出勤停止日数分消化される


【第11問】
 急な発熱,喉と関節の痛みなどの症状があり,電話連絡をしたうえで近隣の内科医の診断を受けました。その際,PCR検査(遺伝子検査)は行われるでしょうか。

A. 簡易検査でインフルエンザA型の陽性反応があればPCR検査も行われる
B. 簡易検査でインフルエンザA型の陽性反応があってもPCR検査は行われない
C. 簡易検査でインフルエンザA型の陽性反応があり,集団感染が疑われるケースのみPCR検査が行われることがある


【第12問】
 新型インフルエンザが発生している地域に有給休暇を取得して渡航しようとしている従業員に対し,会社はどのような対処ができるでしょうか。

A. 渡航禁止を命令できる
B. 帰国後に,さらに数日間の有給休暇を取得させるなどの方法で出勤停止期間を設定できる
C. 休暇による渡航に対しては事前も事後も一切の制限を設けることができない


【第13問】
 従業員本人には異常がないが同居家族に発熱があり,インフルエンザの罹患(りかん)が疑われたため,会社の規定に従って出勤を見合わせました。この場合,勤務上はどのように扱われるでしょうか。

A. 本人に自覚症状が無く,その後の簡易検査でも本人にインフルエンザの陽性反応が出なければ,有給休暇を取得したものとみなす
B. 当初は出勤扱いとし,その後,本人にも発熱などの自覚症状が出れば,病欠とする
C. 会社の規定により出勤を見合わせたものであり,本人の自覚症状の有無にかかわらず,通常勤務したものとみなす


【第14問】
 パンデミックが発生している中,業務上のやむない事情から従業員に出勤を要請しました。従業員は最終的に出勤を了承したものの,通勤途上の感染リスクをしきりと気にかけていました。このあと従業員が新型インフルエンザに罹患(りかん)して死亡した場合,どのように取り扱うのが妥当でしょうか。

A. 通勤災害であるが,労働災害ではない
B. 労働災害である
C. どちらとも言えない


【第15問】
 事業主は,従業員に新型インフルエンザを疑う症状が出た場合,どのように対処すべきでしょうか。

A. 厚生労働省に報告の義務を負う
B. 厚生労働省のガイドラインに従い,従業員に発熱センターや近隣の医師への連絡を促す
C. 従業員の自主性に任せればよい


パンデミック時のコンプライアンス

【第16問】
 既に契約が完了している受託業務において,新型インフルエンザのパンデミック期間中に,納期遅延やサービスの量・質の低下が生じました。この場合,受託者はどのような責任を求められるでしょうか。

A. 契約書に免責事項が明示されている場合を除き,必ずしも免責になるとは言えない
B. 大規模な災害に準じる扱いとなり,契約書の文言にかかわりなく賠償責任は免除される
C. 契約書に明確な免責事項が明示されていない場合でも,契約条項を守るため相応の努力をしていれば賠償責任は免れる


【第17問】
 パンデミック時に,決裁を得るために役員の自宅に連絡したが,本人が不在であったため,家族に顧客情報を含む内容を伝言してもらいました。この連絡手順で問題ないでしょうか。

A. 緊急事態であり,伝言を託した人が役員の家族と信ずるに足る事実がある場合は守秘義務違反とはならない
B. 顧客に対する守秘義務違反にあたる
C. どちらとも言えない


【第18問】
 パンデミックを想定した緊急時の連絡や業務の継続を目的に,従業員の携帯番号などの個人情報を収集しました。問題ないでしょうか。

A. 個人情報保護法に抵触する可能性がある
B. 個人情報保護法の適応除外となる
C. どちらとも言えない


【第19問】
 パンデミック時の在宅勤務中に,従業員の不注意から顧客情報が流失してしまいました。この場合,会社はどのような責任を負うでしょうか。

A. 善管注意義務を果たしたと証明できれば,会社側に責任は無い
B. 会社側の管理責任は免れない
C. 従業員の不注意であり,従業員が責任を負う


BCP(ビジネス継続計画)とパンデミック対策

【第20問】
 地震や火災などに対するBCP(事業継続計画)と新型インフルエンザなどのパンデミック対策はどのような関係にあるでしょうか。

A. ともにBCPの災害シナリオであり,それぞれに特殊対応を考慮すればよい
B. 全く同一のものであり,同じ対策で対処できる
C. それぞれ独立しており,特に関係はない


※検定問題は1回しか受験できません。慎重にご回答下さい。