2009年10月に本サービスを開始する予定のウィルコムの次世代PHS「XGP」。現在,JR山手線内の一部エリア限定で試験サービスを提供しているが,別の“限定”も存在することが判明した。「屋内への浸透性能」も制限されているという。

 同社の近義起執行役員副社長は本誌の取材に対し,「現在の試験端末では,ある電波強度よりも弱くなると圏外になるように設定してある」と明かした。ウィルコムは6月中旬から,一般企業に対してXGP端末の貸し出しを始めている。「まずはXGPの速さに驚いてもらいたかった」(近副社長)ため,電波が弱く速度の出にくい場所では,あえて通信できなくしたのだという。

 XGPの不安定さを隠すという理由もあったようだ。端末と基地局のチューニングが不十分で,電波が弱い場所や強い反射波を受ける場所では通信が不安定になる場合があるという。今後,実地で試行錯誤しながら弱い電波でも安定してつながるようにチューニングしていく計画である。目標は「携帯電話を超える屋内浸透率」(同)とする。

 速度だけでなく,パケットを通信相手に送ってから返事が戻ってくるまでのラウンド・トリップ時間(RTT)も,チューニングしていくという。日経コミュニケーション編集部の実験によればXGPのRTTは30ミリ秒程度(関連記事)。一方で,NTTドコモは開発中のLTE(long term evolution)の実験環境で,RRTを10ミリ秒以下に抑えられたと公表している。「ウィルコム網内ではXGPでも10ミリ秒以下。さらに短くできる」(同)。

 これらのチューニング成果は,本サービス開始時には実装するという。料金水準にもよるが,屋内浸透が良くなればイー・モバイルの有力な対抗馬として急浮上してくるだろう。