簡単に白旗を揚げてしまうと,相手にさらにつけ込まれるのが世の常だ。米Microsoftは先日,WindowsにWebブラウザの選択画面を設けるとの案を示した(関連記事:Microsoftが欧州でWindows 7に「ブラウザ選択画面」,ECが歓迎の声明)。これに対し,米Mozillaの幹部3人は,その対応では不十分だとして異議を唱えている。彼らは,Windowsにさらなる変更を加え,Internet Explorer(IE)が「Windowsの中で特別扱いで優遇されている」状態を解消すべきだと主張する。

 3氏はそれぞれ別々のブログ記事で主張を展開している。MozillaのMitchell Baker会長と,法務担当のHarvey Anderson氏はいずれも,ブラウザ選択画面に対する同社の公式見解として示している。さらに,両氏の記事はともに,Mozillaコミュニティ開発担当ディレクターのAsa Dotzler氏が7月下旬に投稿したブログ記事を参照している。こうして生まれた相互リンクを通じて,3氏が互いの主張を補完し合うという妙な関係になっている。

日常操作の随所でIEが使われることを問題視

 Baker氏の主張の軸は,Microsoftが示したブラウザ選択画面ではIEの根本的な問題の解消にならないというものだ。つまり,IEが常に存在し,Windowsのデスクトップ上(Windows 7の場合はタスクバー)に鎮座している点を,Baker氏は問題視している。この状態を変えるには,ユーザーが別のブラウザをインストールし,さらにIEを“無効”にする方法を探り出さなくてはならない。

 Anderson氏の言い回しはもう少し慎重だ。例えば,Microsoftが「前向きな一歩」を踏み出したことに賛意を示している。だが,この変更の成否は,Microsoftが今回の提案の精神をどれだけ尊重して行動するかにかかっていると指摘する。また,Baker氏と同様,やや見当違いな問題提起も行っている。ユーザーが「Windows Update」にアクセスする際にIEがデフォルト・ブラウザの座を奪おうとするという主張だ。Windows VistaとWindows 7のWindows UpdateはIEを必要とせず,Windows XPについてもMicrosoftはしかるべき変更を行う意向を表明しているのだが,その点を考慮していない。

 また,Microsoftの提案の中で,IEとOffice 2007の結び付きを解消すると具体的に言及した部分に関しても,3氏はそろって懸念を示している。Microsoftのほかのアプリケーションには触れていないからだ。特にOffice 2010を不安視している。Anderson氏は当然のごとく,「Microsoftのアプリケーションがブラウザを起動する必要があるときには,ユーザーのデフォルト・ブラウザのみを起動すべきだ」と述べている。

小手先でないOSとして根本的な対策を求める

 Anderson氏の記事を隅々まで見ていくと,抜本的な変更が必要だとの主張がうかがえる。例えば,ブラウザ選択画面にある代替ブラウザのダウンロード・リンクについて,ユーザーが選んだブラウザのダウンロードだけでなく,インストール処理を開始するところまで行うよう求めている。また,Microsoftが示したブラウザ選択画面のサンプルがIE優先となっている点にも不満を漏らしている。

 だが,最も見当違いに思えるのは,Asa Dotzler氏の記事にある次の言葉だ。「私の見解としては,ブラウザ選択を意義あるものにするためには,Microsoftはこうした問題すべてに対処する必要があり,さらに私がまだ気付いていない問題についても対処する必要があろう」。

 これからの先行きが心配だ。

 ここで取り上げたMozillaの3氏のブログ記事は以下のリンクから参照できる。

・Mitchel Baker氏のブログ投稿記事「Proposed Microsoft - EC Settlement」(「Microsoftが欧州委員会(EC)に提示した和解案」)
・Harvey Anderson氏のブログ投稿記事「Thoughts on Microsoft's Settlement Proposal in the European Commission's Tying Investigation」(「欧州委員会の調査に対してMicrosoftが提示した和解案に関する考察」)
・Asa Dotzler氏のブログ投稿記事「Microsoft's Settlement Proposal」(「Microsoftの和解案」)