武井 智子 氏
NTTデータ 第三金融事業本部 コミュニティバンキング事業部 信用金庫統括部 信用金庫担当 課長代理
武井 智子 氏

 入社9年目のときから,プロジェクトマネジャーとして7つの開発チームと40人のシステム開発メンバーを率いているのは,NTTデータの武井 智子氏。全国の信用金庫のうち,およそ9割の250金庫が基幹システムとして共同利用している「信金共同システム」の新機能を開発している。信金共同システムが扱う資金量は,メガバンクと肩を並べる規模だ。

 武井氏が担当しているバッチ処理システム(大量のデータを一括処理するタイプのシステム群)では,年間50~100の機能追加案件があるという。案件当たりの開発規模は,小さなものから100人月(1人が1カ月でできる仕事の量が1人月)かかる大きな案件まで幅広い。武井氏は,同時進行する複数の開発案件を舵取りしている。

 プロジェクトマネジャーの仕事は,「品質」「コスト」「納期」の条件を満たすようにシステム開発プロジェクトを完遂させることにある。一般にプロジェクトマネジャーは,設計書の作成やプログラミングといった,手を動かす実務作業にはそれほど関与しない。

 それよりも,周到に仕事の計画を立て,必要な開発メンバーを集め,予想外の問題が起こってもプロジェクトをなんとか成功に導くための「プロジェクトマネジメント」が主たる仕事となる。その仕事の7割は,打ち合わせや折衝,段取りなどの「コミュニケーション」に費やされるといわれている。

 武井氏の1日も同様である。武井氏の職場では,朝9時に約40人のメンバーで朝礼を開く。ここで周知事項を全員に話したあと,チームリーダーだけが残って各チームの進捗状況を確認したり,問題が起こっていないかどうか,問題の解決が予定通りに進んでいるかどうかなどを尋ねたりする。ここで対処すべき課題が見つかれば,武井氏が関係者を巻き込んで,個別に対策を検討する。

 その後は,個々の開発案件に関する様々な仕事をする。具体的には,新規の機能追加依頼やシステム設計に関する顧客との打ち合わせ,他の開発チームとの打ち合わせ,関係者を交えたテストの段取り,突発事項への対応などだ。こうしたコミュニケーションを通して日々の課題解決を図り,プロジェクトの外部との調整役を果たしている。

 武井氏の場合,仕事の内訳は「設計に関する打ち合わせが全体の2割,プロジェクト内のマネジメントが3割,テストの段取りが3割,突発事項への対応が2割くらい」という。

入社2年目から小さなチームを受け持った

 武井氏がNTTデータに就職するとき,大学では文系の専攻だったため「営業をやりたかった」そうだ。しかしながら,配属されたのは現在の部署で,1年目は信金共同システムのプログラミングを担当した。

 武井氏にとって転機となったのは,2年目のことだ。1年目から開発していたシステムの最終的なテスト作業を担当することになった。チームリーダーは武井氏。協力会社のエンジニア2人と共に,7カ月後の本番稼働までにテストを完了させなければならなかった。

 このシステムは,各信用金庫が持っている融資関連データを信金共同システムに取り込むためのものである。それほど大きなシステムではなかったが,複数の外部システムと接続するため,技術的な確認作業やテスト調整作業などが多いという点で難易度が高かった。

 チームリーダーという“人を率いる役割”を初めて担い,「問題や予想外なことの連続で,なにもかもうまくいかなくて,すごく苦労しました」と武井氏は振り返る。品質確保のために,土壇場でテストの回数が増える経験もした。

 だが,苦労の甲斐あってスケジュール通りにシステムの本番稼働を迎えることができた。バグ(プログラムの不具合)も見つからず,品質面でも要求を満たせた。武井氏は「すべてが終わって,ものすごい充実感がありました」と嬉しそうに話す。この経験があったからこそ,プロジェクトマネジメントの仕事を続けられているのだと武井氏は語る。

 その後,年を追うごとに武井氏のチームの開発メンバー(協力会社)は増えていった。入社3年目には4人,8年目には10人になった。この間にプロジェクトマネジメントの経験を少しずつ積み上げ,入社9年目(2008年)の2月,ついにプロジェクトマネジャーとして7つのチームと総勢40人のメンバーを任されるようになった。