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日経コンピュータ

第71回 改善余地があるSaaSの満足度

by Gartner
ベン・プリング リサーチVP
本好 宏次 主席アナリスト

 ガートナーが実施した顧客調査によれば、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の認知度がかつてないほど上昇しているにもかかわらず、顧客の多くがSaaSに必ずしも満足していないことがわかった。SaaSは決して「万能薬」ではないようだ。

 本調査は2008年12月から、SaaSを利用、または検討している米国と英国の顧客企業333社を対象に行った。多くの顧客がSaaSの有用性を認めているが、それが満足度に必ずしも結びついていない。顧客企業の満足度水準は「熱のない」状態で、SaaSは誰にでも勧められるとは言い難い。回答者の約 3分の2が、今後2年間はSaaSの利用を増加させないと述べている。

 具体的には、回答企業の58%が「今後2年間はSaaS利用規模を現状レベルにとどめる」、32%が「利用規模を拡大する」、5%が「利用を停止する」、5%が「利用規模を縮小する」と回答している。

 SaaSの満足度は7点満点で「4.74」である。本調査ではSaaSの満足度を16項目にわたって調査した。「ビジネスユーザー向けの機能性」「事業者の顧客対応の速さ」「技術的な性能に対する信頼性」「サービスの信頼性」「コンプライアンス対応とリスク管理」などである。これらの満足度は、総合的な満足度と同水準だった。

 米国企業と英国企業との間に違いも見受けられた。米国企業の満足度は、全体平均よりもわずかに高く「4.94」だった。一方、英国企業の満足度は、全体平均よりも低い「4.34」であり、米国企業よりもSaaSに不満を感じていることがわかった。

 米国企業の満足度が高かった項目は、「事業者の顧客対応の速さ」「ビジネスユーザー向けの機能性」「技術的な性能に対する信頼性」だった。一方、「サービスの年間コスト」「契約条件」「コストの予測可能性」に対する満足度が低かった。

 対して英国企業の満足度が高かった項目は、「コンプライアンス対応とリスク管理」「サービスの信頼性」「契約条件」である。満足度が低かった項目は「サービス実装の速度」「コストの予測可能性」「販売後のユーザーサポート」だった。

 SaaSの導入を決断する際に何を重視するか三つ選んでもらったところ、46%の回答企業が「技術的な要件に適合しているか否か」を選択した。2番めに回答が多かったのは「セキュリティ、プライバシー、機密保持」で33%、3番めは「アプリケーション連携の容易さ」「事業部門が求める機能を備えているか否か」が同率で、それぞれ29%の回答企業が選択した。

 SaaSの利用を検討したが結局採用しなかったという回答企業に、その理由も聞いている。回答の42%が「サービスのコストが高い」と指摘し、38%が「アプリケーション連携が難しい」と、33%が「技術的な要件に合致しなかった」と指摘している(複数選択)。これらの回答は「SaaSはコスト削減に役に立つ」という世間一般の印象と相反している。また、SaaSが必ずしも顧客の要件を十分に満たしていないことも浮き彫りにしている。

 多くの企業がSaaSの導入を検討しているなかでこのような結果が出たことを、SaaS事業者は不安に感じることだろう。顧客企業はSaaSのコストにためらいを感じており、他のアプリケーションと連携できるか不安を抱いている。SaaS事業者はこれらを改善すべきである。特に注力すべき点はTCOの削減である。また、SaaS事業者は、高価なコンサルティングやサポートを受けなくてもSaaSを容易に導入できるようにするとともに、顧客企業における異種混在性を正しく認識した上でアプリケーション連携をさらに容易にすることが求められている。

 何よりも重要なのは、事業者自らがSaaSの基本を再認識することだ。SaaSとは、軽量で、単純で、直感的で、俊敏で、簡素なものでなければならない。

 [2009/09/02]
出典:日経コンピュータ 2009年8月19日号  137ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)
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