写真●寺田 憲治氏 東急建設 管理本部 経営企画部 システムグループリーダー
写真●寺田 憲治氏 東急建設 管理本部 経営企画部 システムグループリーダー

 ITベンダーの提案書から我々が読み取るのは、内容だけではない。どのくらい本気で受注しようとしているかを知ろうとしている。本気度は、提案書やプレゼンテーションから透けて見えるものだ。

 直近で、このことを実感したのは、今年4月に3800台のクライアントパソコンを刷新したときだ。

 パソコンだけではなく、キッティング作業、保守サポート、ヘルプデスク業務などをまとめて1社に依頼しようと、5社のパソコンメーカーから提案を募った。

 2社の提案からは、本気度が伝わってきた。両社とも、サービス事業部門の責任者から、当社の要望に応えるよう、本来のメニューにはないサービスの提供の確約を取り付けてきていた。提案書にもこのことを明記していた。

 提案したのはパソコンの営業担当者である。にもかかわらず、保守やヘルプデスクについて、サービス事業部門に掛け合ってきたのだ。

 プレゼンテーションからも本気度を感じた。技術的な内容に関してはSEを同席させて説明した。SEも「私が責任を持って実行します」と言っていたが、これも営業担当者が作ったシナリオのうちだろう。

 おそらく2社の営業担当者は、この提案書を作り、プレゼンするために、走り回って社内を説得したに違いない。

 事前に手間とコストをかけるほど、失注したときの営業担当者自身の責任は大きくなる。本人がリスクを覚悟して、提案に望んできたのだと思う。

 社内の他部門を巻き込めば、間違いなくコスト増につながる。経費節約と効率化が、営業担当者に求められているのはどの企業も一緒だ。受注できるかどうか不明確な営業段階で、よく他部門の協力を得られたものだと感じた。

 提案書からこういったことが読み取れたので、2社のプレゼンテーションには胸を打たれた。メーカーを感情で選定するわけではないが、「提案段階でそこまで努力してくれるなら、本当に当社のことを考えたソリューションを提供してくれそうだ」という印象は自然に抱くものだ。信頼できる企業に仕事を依頼するのは、当然の判断だろう。

 今回の件では、提案内容も2社が際立っていた。苦渋の決断だったが、2社のうちから当社にとってより条件がいい1社を選び、発注した。

 一方、2社以外のメーカーの提案には失望した。パソコンの仕様や価格は詳しく書いてあったが、当社が求めていたサービスについては、パンフレット程度の資料しか用意してなかった。

 おそらく、できあいの資料の社名を「東急建設様」に変えただけだろう。本気で受注する気がないように思えた。

 提案書のテンプレートを使うことは、最小限の手間で受注しようとすれば仕方ないことだろう。それでも、当社が作成したRFP(提案依頼書)の内容をほとんど反映していない提案書を見ると、ため息が出る。RFPの作成にかかった時間を返してほしいくらいだ。

 RFPの作成は、骨が折れる。当社が何に困っていて、どういう解決策を探しているかを、できるだけ外部の人にも分かりやすく説明しているつもりだ。社内のレビューも通している。

 できあいの提案テンプレートを使うにしろ、少なくとも、RFPに目を通していることが分かるような資料を作成するのが最低限のマナーではないだろうか。(談)