●東広島市にあるダイキョーニシカワの基幹工場の八本松工場
●東広島市にあるダイキョーニシカワの基幹工場の八本松工場

 ダイキョーニシカワは,自動車内外装部品を中心に,住宅機器などのプラスチック製品を製造する総合プラスチック・メーカーである。2007年4月にジー・ピー・ダイキョーと西川化成の2社による経営統合によって発足した同社は,統合を機に各社が自前で持っていたホスト系の基幹システムを一本化し,オープン系システムへ移行した。

 システム改編の最大のポイントは,生産管理システムの刷新。受注から資材発注までの時間を大幅に短縮し,在庫回転日数を28%短縮すると共にコスト削減を達成した。同時に,管理帳票を10分の1に統合して紙使用量を減らすなど,業務に伴うCO2排出量を35.4%削減した。

“ジャストインタイム”が常識の自動車業界で生き残りをかける

図1●表皮一体成形工程の作業風景
図1●表皮一体成形工程の作業風景

 同社は,広島県安芸郡に本社を置き,県内を中心に11カ所の工場を擁する。売り上げの約80%を自動車メーカーのマツダ向けの製品が占めており,広島県内に400社以上ある自動車関連企業の1社である(図1,図2)。

 自動車メーカーは,国際競争力強化のため,部品メーカーに対する開発連携や取引の高度化を推進している。マツダが部品各社に求めている「計画順序搬入」も,そうした取り組みの一つだ。

 マツダでは,様々な車種や仕様の自動車を一つのラインで連続して組み立てる「混流生産」を実施している。「計画順序搬入」は,マツダが事前に決定した納品順位に従って,部品メーカーに製品を納品するよう要請するもので,在庫圧縮と生産コストの抑制を狙った受発注の仕組みである。納品順位は3日前に確定されるが,車の製造ラインに同期する形で納品の要請が伝えられることもあるという。

図2●モジュール組立ラインの作業風景
図2●モジュール組立ラインの作業風景

 「生産管理システムを刷新するうえで最大の課題は,取引先からの納品・受注変更に時間単位で対応できる機動力だった」。こう振り返るのは,ダイキョーニシカワ経営本部システム部長の掛本正治氏である。自動車メーカーからの受注確定や変更の情報を,部品製造のための資材発注データにできるだけ短時間に結びつけること。在庫をできるだけ持たずに,自動車メーカーの要求に対応するには,時間単位で詳細な生産計画を立てられるシステムが必要なのである。

 もう一つ,新しい生産管理システムに求められる重要な要件は,「資材所用量計画(MRP)」システムの処理性能だった。同社では,受注データを基に,部品製造に必要な資材発注量をMRPシステムによって算出しているが,この処理時間の短縮が大きな課題だった。それというのも,1回あたりのデータ投入量が400万件と非常に多いからだ。「1日あたり約1万6000件の受注データを迅速に生産計画に結びつけるには,高性能のMRPエンジンは不可欠」と掛本氏は話す。