環境に優しい車として、電気自動車が期待されている。しかし、走行距離が短い、バッテリーの充電に時間がかかるという二つの大きな弱点がある。これを解消する方法として、米ベタープレイスが、バッテリーを必要に応じて交換する方式を提案している。バッテリー交換ステーションとそれをコントロールする情報システムが、その仕組みを可能にする。

写真1●バッテリー交換型電気自動車は、バッテリーを底面から交換する
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写真2●バッテリー交換ステーションは二つのレーンを持ち、バッテリーを次々と交換していく
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 2009年5月から6月にかけて、バッテリーを毎回充電するのではなく、バッテリーそのものを交換する電気自動車(EV)の実証実験が行われた。ベタープレイス・ジャパンが横浜市内で実施した電気自動車向けバッテリー交換ステーションである。1台当たりのバッテリー交換時間は、約80秒。ほとんど待ち時間なしで、走り続けられることになる。

 バッテリー交換型の電気自動車は、バッテリー交換ステーション(BSS)と呼ばれる建物の内部に停車すると、底面からバッテリーが取り出され、充電済みバッテリーに交換される(写真1写真2)。回収したバッテリーは交換ステーションで充電し、ほかの自動車に供給する。交換の開始・終了などのコマンドは、電気自動車と交換ステーションがBluetoothで通信して制御する。

 この実験のための電気自動車を試作したのが、ベタープレイス・ジャパン。米国に本社を置き、電気自動車向けのインフラ構築を手がける企業の日本法人である。バッテリー交換方式による電気自動車普及を目指してきたが、バッテリー交換ステーションを実際に稼働させたのは、この実験が初めてだ。

電気自動車のアキレス腱はバッテリー

 電気自動車は、ここへきてにわかに注目を集めている。政府の後押しもあり、今後は市場シェアが急速に拡大する可能性がある。自動車メーカーも力を入れる。三菱自動車、富士重工業が市販を開始したほか、2009年8月には日産自動車が電気自動車「リーフ」を2010年後半に市場投入することを明らかにした。

 ただし現状では車両価格が高いことに加えて、一回の充電で走行可能な距離が100km程度であること、バッテリーの充電に時間がかかることなどが、普及に向けた課題になっている。長距離を運転する場合は、バッテリー残量が少なくなるたびにバッテリーを充電し直さなければならない。外出先で利用可能な、電気自動車向け充電スタンドを整備する動きもあるが、充電には数十分を要する。

 これに対し、ベタープレイスが提唱するのが、バッテリーそのものを交換する方式。ベタープレイス・ジャパンの三村真宗 事業開発本部本部長兼社長室室長は、「バッテリーは、電気自動車を高価にする要因の一つ。それを交換方式にすることで、使用量に応じ課金する仕組みを導入することが可能になり、車両価格を抑えることにもつながるはずだ」という。

 ただ、バッテリー交換方式にも弱点はある。確保するバッテリー数に限りがあることだ。バッテリーを求める電気自動車が殺到したら対応しきれない。「高価なバッテリーを多く抱えるとコストが膨らむ。バッテリー交換ステーション当たり20個程度のストックが適切」(三村本部長)と考えられている。