ファシリテーション・テクニックを極める当研究所。現場で培ってきた数々のテクニック/ノウハウの中から、即効性があるツールを紹介しています。第5回と第6回のテーマは「課題管理とTo Do管理」です。今回は実践編として、プロジェクトの計画期と実行期のそれぞれで、「課題管理」と「To Do管理」として実際に何をすべきかについて、実例を交えて紹介します。

プロジェクトの計画期になすべきこと

 プロジェクトの各種計画を策定する計画期には、課題管理の計画を策定します。

(1)課題管理の対象範囲、役割・体制の定義
 まずは、課題管理の対象範囲を決め、どのような流れ、体制で行うかを決定します。対象範囲は、まずプロジェクトとして管理する範囲を明確にしたうえで、プロジェクト全体の課題を、プロジェクトマネジャー(PM)またはPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)の1カ所で管理するのか、チームごとに管理するのかを、プロジェクトの規模や体制などを考慮して決めます。

 次に、課題リストのオーナーや課題提起者などの役割を定義し、担当者を設定します。

(2)ツールの選定
 経済的で、簡単な方法は、表計算ソフトのExcelを使うことです。検索、ソート、フィルターなどの機能は、多くの課題の中から、該当するものを抽出する際に便利な機能です。分類やステータスなどはリスト選択式にすると、集計・分析する際に有効です。

 一方でExcelを使用した場合のデメリットもあります。課題の件数が増え、Excelの行数が増えてくると、パフォーマンスが悪くなったり、ファイルサーバーに保存したExcelファイルを複数人で同時に参照・保存したりすると、ファイルが破損することがあります。こうした事態に備え、こまめにバックアップを取ることをお薦めします。

 小規模なプロジェクトやプロジェクトの上流フェーズであれば、Excelファイルを共有したり、メールで関係者に送付したりという運用で対応できるかと思います。ですが、大規模なプロジェクトになってくると、複数のチームが構成され、社内外の関係者も増えるため、Excelファイルの共有が難しくなります。

図1●フリップチャートを使った「To Doリスト」の例
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 最近は、課題管理専門ツールのほか、プロジェクト管理ツールの一機能として提供されるものまで、様々な課題管理ツールが存在します。どのツールにするかは、予算やシステム環境、ユーザー数、ユーザーのスキルなどを考慮して選択すればよいでしょう。

 当研究所では、To Doリストのツールとして「フリップチャート」というミーティング用の模造紙を使っています。プロジェクト関係者が常に見られる壁に貼っておき、随時To Doの追加・更新が可能な状態にしておきます(図1)。

(3)管理項目の決定
 当研究所が使っている課題リストでは、下記の12項目を管理しています。
・No.
・記入日
・記入者
・課題分類=予め分類を定義可能であれば、リストから選択できるようにする
・重要度=「高」「中」「低」の3段階。それぞれの定義を設定する
・緊急度=「高」「中」「低」の3段階。それぞれの定義を設定する
・課題内容
・対応状況/結果=課題検討の経緯が分かるように、日付と記入者を入れる
・担当
・ステータス=ステータスが多いと運用しづらいこともある。「未着手」「対応中」「完了(担当)」「完了」といった四つぐらいが適当
・期限
・完了日

(4)課題管理プロセス、ルールの定義
 (1)~(3)が決定したところで、課題管理のプロセスフローを定義します。どのアクションによって、ステータスが更新されるかを明示する必要があります。

 また、課題リストに記載する際のルールを定義します。課題リストへの記載を各担当者に実施してもらう場合には特に、管理項目ごとに記載ルールを定義し、徹底を図ったほうが、後から課題対応状況をチェックしたり、分析したりする場合に有効です。

(5)プロジェクト関係者への説明
 このステップが重要です。(1)~(4)までの準備が整ったら、プロジェクト関係者に直接説明する機会を設けましょう。特に説明が必要なのは、前回の「概要編」で解説した「リスク」「問題」「課題」「To Do」の考え方です。プロジェクト関係者がこれらに関して共通認識を持たないと、的確な課題管理をすることが難しくなってしまいます。