アクセンチュア IFRSチーム
経営コンサルティング本部
財務・経営管理 グループ シニア・マネジャー
小野寺 拓也
IFRS(国際会計基準)の導入方針を示した日本版ロードマップと言えるものが,「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」です。金融庁 企業会計審議会が2009年6月16日に公表し,同6月30日に与謝野馨金融担当大臣に答申されました。これにより,IFRS導入までの道筋がより明確になったといえます。
この中間報告は国際的動向,とりわけ米国の動向を意識した内容になっています。ポイントになりそうな内容を簡単に紹介しましょう(表)。
日本 | 米国 | |
---|---|---|
任意適用タイミング |
2010年3月期 |
2009年12月期 |
強制適用タイミング |
2015年もしくは2016年 |
2014年 大規模上場企業 2015年 中規模上場企業 2016年 小規模上場企業 |
導入対象となるIFRS |
IASB作成のIFRS |
IASB作成のIFRS |
移行時の財務諸表開示対象期間 |
2年 |
3年 |
(1)2010年3月期から任意適用を認める
2010年3月期から,「国際的な財務・事業活動」を行っている上場企業の連結財務諸表に対して,IFRSの任意適用を認めることが適当である旨を述べています。IFRSが急速に国際的に広まっている現状を踏まえ,企業および市場の競争力の観点から認めることにしたものです。
ただし,希望するすべての企業に対し,IFRSの早期適用を認めるわけではありません。一定の条件の下で適用を認めることになると考えられます。
(2)強制適用の是非判断は2012年,その後3年の準備期間
強制適用の是非の判断時期は,2012年を目途とするとしています。その際の対象は,上場企業の連結財務諸表が適当と述べています。
強制適用を実施する場合,準備期間として少なくとも判断時期から3年間を設けることを示しています。2012年に強制適用の実施を決定した場合,3年以上経過した2015年または2016年の適用開始ということになります。
(3)並行開示は導入初年度に限定
日本基準からIFRSを任意適用する際のそれぞれの基準による財務諸表の並行開示については,導入初年度における開示(前年度および当年度財務諸表各1年分)に限定することを提案しています。
(4)適用対象となるIFRSについては検討中
IFRSを適用する際に「どのIFRSを使うか」が問題になります。米国の案では,IASB(国際会計基準審議会)が作成したIFRSをそのまま適用することになっています。一方,EUでは一部修正・除外して導入しています。
中間報告では,基本的にIFRS(日本語翻訳版)をそのまま適用する可能性を示しつつ,日本としてどのようにIFRSを正式な会計基準として適用していくかについて,今後継続して検討することとしています。
米国では段階的に強制適用
2008年11月にSEC(米国証券取引委員会)が,今後のIFRSに関する作業計画といえるロードマップ(案)を公表しています。以下,ポイントになりそうな内容を説明します。
(1)2009年から任意適用を容認
適用スケジュールとしては,要件を満たす一部の企業に対して,2009年から任意適用を容認すると記載しています。
(2)2014~16年に強制適用
2014年から2016年にかけて,会社の規模に応じて段階的に強制適用することを示しています。
(3)IASB作成のIFRSをそのまま適用
EUのようにIFRSを一部修正・除外の上で適用するのではなく,IASBが作成したIFRSをそのまま適用する可能性を示しています。
(4)移行時に3年間の開示を要求
IFRSへの移行時に開示を要求する期間として,3年間(比較対象期間として2年度分)を提示しています。