部下をお持ちの管理職の皆様方は自部門の適正人員は何人だと認識しておられますか? 多分、現状の人員数が適当か、あるいは若干少ないと認識されておられる管理職の方が多いのではないでしょうか? しかし、それは大きな間違いです。

 以前、私がBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を実施した際に、多くの管理者に対して「貴方の部門の人員数は過剰ですか? 不足ですか? それとも適正ですか?」と尋ねてみました。結果は予想通り「不足気味です」という回答が一番多かったのですが、私は質問の度に各管理者に対して「会社が2年連続赤字にもかかわらず、人員が不足しているという状況は、この会社の存続意義が無いということですよ」と正すと、全員が沈黙してしまったことを思い出します。

 この管理者たちが「人員が不足気味だ」と認識する原因はどこにあるのでしょうか? それは、彼らの部下たちが「忙しい」と言っていることが大きな原因なのです。しかし、管理者は常に自部門の業務の役割や、前工程・後工程との関連性や納期を考えたうえで、効率的な業務遂行対策を推し進めていかなくてはならない使命を持っているわけですから、「忙しい」という発言に対して、原因を調査し、適正な対策を打たなければならないはずです。

 ところが、少なからぬ管理者が部下の仕事内容や負荷の度合いを全く理解していないケースがあるために、部下が「暇です」と言わない限り過剰人員を把握することができません。私の経験上、「暇なので何か仕事を指示してください」と申し出てくる部下は非常にまれです。結局、何かしら適当な仕事を作って、1日を過ごすケースも少なくはないのです。

1人1台のパソコンとネット環境の整備が、人余りが顕在化しない状況を作る

 1人1台のパソコンとインターネット環境の整備が当り前のようになってからは、この傾向が非常に強くなり、従業員はパソコンの前に座り、マウスを動かしてキーボードをたたいていると仕事をしているようにみえてしまい、人余りが顕在化しない環境まで整備してしまっているといっても過言ではありません。一度こっそり忍び足で部下の背中越しにパソコンの画面をチェックしてみてください。びっくりするような発見があるかもしれませんよ。

 不況・リストラなどと非常に厳しい環境下にある企業においても、実はこのようにぬるま湯に浸かったような現状が存在し、知らず知らずのうちにそれが企業文化になってしまうのです。しかし、各部門の適正人員数を計算式で割り出すなどという手法が無いために、現場が忙しいという意見を表明し、実際も残業が多いとなれば、現場の意見は正しいとみなさざるを得ないために、適正人員数は現場の意見によって認識されるという結果になってしまいます。

 この現場の声を無視して業務改革を行おうとすると間違いなく悪人扱いされることは、誰もが簡単に予測できます。ですから、結果的には現場の意向通りの人員が適正人員数となってしまうのです。

「少数精鋭とは、まず少数にすることなり!」

 ネミック・ラムダ(現TDKラムダ)の創業者である斑目力曠氏が、適正人員化に対する非常に有効な格言をおっしゃっています。「少数精鋭とは、まず少数にすることなり!」

 誠に素晴らしい考えですね、私はこの格言を斑目氏から直接聞いてからは、常にこの格言を意識してマネジメントを行ってきました。私がある組織の責任者だった際に、どうみても暇そうな部門があったので、業務の洗い出しと各人の役割の列挙を指示しました。そうすると予想通り、一件暇そうにみえるその部門が大量の業務を抱え、リポートだけを見ると、暇どころか人員不足を予見させる内容だったのです。

 そこで、私は前述致しました「少数精鋭とは、まず少数にすることなり!」を実践しました。当時その部門は14人でしたが、問題が起これば調整するという条件付きで、部門の人員数をまず半数に削減してみました。

 結果は思った通り、残業や休日出勤の増加で大騒ぎになりました。しかし、私はクレームが出るたびに、「本当にダメだったら調整するので、1カ月我慢してください」という説明をし続けました。1カ月後、その部門の責任者が嘆願にやってきました。「熊澤さん、このままこの体制で業務を続けますと近い将来病人が出ますので早急に増員してください!」

 私が「何人増員すれば仕事が回るの?」と聞くと、彼は「2人、お願いします」と答えました。私はすぐに了承しました。これで、この部門の適正人員数が14人ではなく、9人であることがハッキリ分かったということになります。