Q:仕事以外の場面でも人を侮辱した発言を繰り返す上司の対処法は?

 この連載の記事「上司が打ち合わせの度に大声で怒鳴ります。部下としてどう対応すればいいのでしょうか。」で,「まず仕事以外の話で盛り上がるのが大事です」というのはよく分かります。しかしながら,仕事以外の場面でも人を侮辱した発言を繰り返す上司については,どう対処したらよいのでしょうか。

 侮辱した発言は,私に対してだけでなく,誰に対してもそうなので,そういう人だと思うしかないのかもしれませんが,楽しく会話をしていても,そうした発言で場がしらけてしまうことが多々あります。クライアントから上司の言動についてのクレームが来ることもあります。本人には悪気がないのかもしれませんが,なんとも困り果てています。

 この上司が「社長」であるので,社内では何ともしようがありません。「こうしたほうがいいと思います」とか「そういうのは良くないと思います」といった話をしたこともあるのですが,「俺のやることに文句があるのか」と逆ギレします。アドバイスをいただければ幸いです。

A:まずは勘違い社長のタイプを見極めよ。

 いますね。「自分が一番凄い」と信じていて,他人が皆バカに見える勘違い社長。この場合,本人がまだ若ければ「未熟者」で済むのですが,それなりの年齢であれば,もうダメですね。会社の将来は暗いでしょう。

 実は私自身も,41歳で外資のトップになった頃は,かなり勘違い経営者でした。他人が皆バカに思えたものです。しかし,やはりそれでは長続きせず,45歳で独立して自らの生活を叩き上げてきた過程でようやく自分の勘違いに気がついたのです。かつての部下には本当に申し訳なかったと今では反省しきりです。

 そのような私の経験から,この種の勘違い社長のタイプを分類すると,若い頃からのエリートで出世街道を登りつめたタイプ,叩き上げで自らの実績で登りつめたタイプに分かれます。さらに,頭の固さを軸にしてみるとあなたのとるべき対処法が分かってきます(図1)。

図1●勘違い社長の分類と対処法
図1●勘違い社長の分類と対処法

 頭の柔らかさをチェックするには,あなたが「こうすればこれぐらい儲かるはずですが」と聞いた時の対応で測れます。経営者は儲かる話は無視できないものだからです。「ほう,それにはどうしたらよいのか」,「それなら自分でやってみるか」のような多少前向きな反応でしたら頭が柔らかいほうです。

 「そんなのダメに決まっているだろう」と頭ごなしに否定するのでしたら頭が固いほうです。さらに,顧客や同業のもっと凄い経営者,他分野の凄い方々にも尊大な態度をとるようでしたらもう頭がカチカチで,逆にそれらの方々には丁寧な対応ができるのでしたら柔らかいほうです。

 まず,エリートで頭の固いタイプは,これはもう何を言ってもダメです。しかし,確実に長続きしませんから,時を待つのも手です。つまり,「様子見」作戦です。私でしたら待たずに転職しますが。

 次にエリートでも頭の柔らかいタイプです。この場合は論理性があってやる気のある提案で,自分が未経験の分野に関しては一応話を聞くはずですから,相手の自尊心を傷つけないように相手を持ち上げながら会話をするのです。つまり「持ち上げ」作戦です。

 さらに,叩き上げで頭が固いタイプですが,このタイプも何を言ってもダメです。しかし,叩き上げの過程で確実に実力を持っているはずですから,何か社長の見所を探しましょう。つまり,「学んで脱出」作戦です。例えば,ある分野の技術力が凄い,あるいは人脈が広く営業力が凄い,などです。この中からあなたが学べる点を探してみましょう。普段からそのような目で社長を見ていれば必ず何かヒントがあるはずです。そしてポイントを覚えたら転職しましょう。

 最後に,叩き上げで頭の柔らかいタイプですが,これは勘違いも軽症の部類でしょうから,まずは「持ち上げ」作戦で社長の自尊心をくすぐりながら会話をし,次に「学んで脱出」作戦で,社長の見所を学びましょう。頭が柔らかい叩き上げであれば,いつか自分の勘違いに気付くものですが,それを待てないようでしたら転職しましょう。つまり「複合」作戦です。

 締めくくりに一言。それでもあなたはまだ会社に在籍しているのですから,ひょっとしたらその社長に対しても,どこか尊敬の念を持っているのかもしれません。それを確認できたなら,社長に何を言われても「それでもこの人はここが凄い」と思いながら,自尊心の地雷を踏まないコミュニケーション方法に気をつけるのが,今すぐにあなたがすべきことなのかもしれません。いつまで耐えられるかは,あなた次第ですが。