写真1●JANOG24の会場の様子
写真1●JANOG24の会場の様子
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 2009年7月9日,10日の2日間,日本のインターネットの聖地ともいえる東京・大手町で,JANOG24が開催されました。会場は日本経済新聞社の新社屋にある「日経ホール」です(写真1)。6月にこけら落としが行われたばかりの会場での開催ということで,ホストをされた日本経済新聞社さんもかなり気合いが入っていたようです。

 そのかいもあり(?),今回のJANOGは申し込み時点から波乱が起きました。募集定員が本会議で600人程度,懇親会は150人という枠に参加希望者が殺到し,なんと懇親会の募集が1週間もたたないうちに締め切られるという事態が発生したのです。本会議に至っては,懇親会に続いてすぐに申し込みが一杯となり,急きょ610人まで募集定員が引き上げられました。

 東京開催となると,みなさん足を運びやすいのでしょう。そういう事情を考慮しても,想像以上の盛況ぶり。当日への期待が大いに高まりました。

アドレス関連の話題は2007年から登場

 最近のインターネットの話題といえば,やはりIPv4アドレス枯渇とIPv6ですね。今回のJANOGでも,プログラムの多くがこの話題に費やされました。思えば,IPv4アドレス枯渇とIPv6は取り上げられるようになって久しい話題。ほかには何が話題になっていたのでしょうか。

 そこで,JANOGミーティングのプログラムのテーマにどのような傾向があるのかを簡単に調べてみました。具体的には,JANOG19からJANOG24の6回分について,(1)IPv4アドレス枯渇,(2)IPv6,(3)ネットワーク,(4)サーバー,(5)その他というカテゴリに分け,プログラムに使った時間を集計してみました()。

図●JANOGのプログラムの傾向
図●JANOGのプログラムの傾向
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 グラフにしてみると,なかなか面白い結果になりました。2007年1月に沖縄で開催したJANOG19のころには,IPv4アドレス枯渇とIPv6に関する話題はまだなかったんですね。これは意外でした。それが徐々に増え始め,今回のJANOG24では,IPv4アドレス枯渇とIPv6に関するプログラムだけで半分近い時間を割いていることが分かります。また,さすがJANOGというだけあって,ネットワークに関するプログラムの比重が高いのも特徴的です。

 もちろん,今回分類したカテゴリには私の主観がかなり入っています。プログラムによって議論する内容の濃さも異なりますから,時間を多く割いているからといって,ここで見えてきた傾向が時代的な傾向とはいえません。それでも,この結果は私のなかでかなり面白いものでした。

軽い話題をさっくり楽しめる「ライトニングトーク」

 さて,話を今回のJANOG24に戻しましょう。JANOG24では,IPv4アドレス枯渇とIPv6の話題が半分を占める中,ネットワークやサーバーに関する話題も充実していました。私が特に面白いと感じたのは「ライトニングトーク」です。

 ライトニングトークは,北海道で開催されたJANOG20あたりから始まった短時間のセッションです。「軽い話題を短い時間で端的に話してもらう」というのが趣旨なので,時事ネタに近いものが組み入れられたり,(議論というよりも)報告といった内容になることが多いようです。

 一般のプログラムというのは,JANOGミーティングのプログラム委員の方々が半年かけて作り込みます。この方法だと,一つひとつのプログラムの中身がかなり濃く,洗練されたものになります。一方で,流れの速いこの世界だと,半年間に起きた事柄が取り込みづらくなってしまいます。そこで考案されたのが,ライトニングトークだったのです。

注目した話題その1──俺のBGPネットワーク!「IHAnetのご紹介」

 ライトニングトークの中でも面白かったものの一つが「IHAnetのご紹介」です。紹介していたのが「伊波」(いは)さんという方なので「イハネット」と思いきや,「アイハネット」と読むそうです。

 私を含め,過去のBGP(border gateway protocol)オペレータというのは,多くの失敗を経験しながらBGPを運用してきました。言うまでもなく,この経験が現在のインターネットの運用を支えているわけです。でも,ここまでインターネットが安定すると,なかなか失敗もできません。このため,現在のBGP運用の現場では,確実に運用するためのマニュアルが整備されています。また,稼働しているネットワークに対し,実験的に設定を突っ込むということは絶対にできません。

 これは,インターネットの安定運用という観点では至極正しいことです。問題は,突然のトラブルに見舞われたり,外部ネットワークからの攻撃にさらされた場合でも十分な対応ができるBGPオペレータを育てるという環境を作りづらいことです。

 そこでIHAnetでは,家庭に引き込んでいるインターネットの先同士を有志で相互接続し,仮想ネットワークを作りました。そのうえでBGPで相互接続し,BGPオーバーレイネットワークを構築したのです。各参加者は,各自でBGPのオペレーションをし,ネットワークの安定運用に努めています。大量なトラフィックを扱うことはありませんが,自分が失敗すれば,そのトラブルが自分に跳ね返ってくるばかりではなく,接続相手にも迷惑をかけてしまいます。こうした点では,本番さながらのBGPネットワークになっています。

 最近では,IPv6も扱っているようです。このようなコミュニティは非常に良い経験をオペレータに与えますので,今後もどんどんやってほしいですね。詳しいIHAnetの情報はこちらのページにまとまっています。