写真●W発電を備える旭化成ホームズの「発電へーベルハウス」
写真●W発電を備える旭化成ホームズの「発電へーベルハウス」

 5月から家庭用燃料電池「エネファーム」の販売が始まった。販売価格は330万円前後で補助金を差し引くと約200万円。年間の光熱費削減効果は5万~6万円だから、まだ経済性に乏しい。だが滑り出しは好調だ。

 「エネファーム」は、都市ガスかLPG(液化石油ガス)を使って燃料電池で発電し、その際の排熱でお湯を作る家庭用コージェネレーション(熱電併給)システムだ。

 政府は今年度に約60億円の補助金を手当てし、この分で約4000台、補正予算でさらに約40億円を上乗せする見込みで、そうなれば約7000台に補助金が付くことになる。

 販売するのはガス会社とLPG販売会社。1000台以上の販売を目指すのは東京ガスや新日本石油などだ。

 東京ガスは今年度の販売目標を1500台に置いている。発売1カ月足らずで約300台の受注を獲得した。

表●エネファームの販売目標
表●エネファームの販売目標

 これらの設置住宅のほとんどが大手ハウスメーカーの新築住宅だ。積水ハウスと旭化成ホームズは、エネファームを標準装備した住宅を商品化。ミサワホームとパナホームはオプションの1つに加えている。

燃料電池で売電が増える

 特徴的なのは、約300台のうち4割近くが、太陽光発電システムを併設した「W(ダブル)発電」であることだ。積水ハウスの場合、エネファーム設置住宅の半分以上がW発電になっている。「W」にすると、CO2排出ゼロが達成しやすくなる。

 エネファームに加え、標準的な3kWの太陽光発電システムを併設すると、補助金を加えても初期投資は350万円を超える。それでもW発電が受けている理由は、大手ハウスメーカーの価格戦略と2010年度から始まる「フィード・イン・タリフ(FIT)」の効果だ。FITとは太陽光発電電力の高額買い取り制度だ。

 旭化成ホームズの場合、W発電装備住宅とそうでない住宅の価格差は55万円に抑えている。住宅全体の収益率を多少犠牲にしても、W発電で他社と差別化するという戦略だ。55万円で、太陽電池と燃料電池が付いてくるなら、かなりお買い得感がある。

 FITでW発電が注目されるのは、燃料電池で発電した電気を優先的に家庭で使えば、太陽光発電による売電収入が増えるからだ。電力業界は、W発電時の余剰電力の買い取りに難色を示しているものの、環境性の高さから見ても、何らかの買い取り制度が適用される見込みが高い。

 新日本石油も、W発電を営業戦略の1つに据える。太陽光発電を設置している既築住宅に対し、エネファーム設置を勧める。「早くから太陽電池を設置していた家庭なら、資金的な余裕もあるし、売電収入をさらに増やす手段として燃料電池に魅力を感じるはず」(山口益弘FC・ソーラー事業部長)との読みだ。

 FITという追い風を得たエネファーム。だが、自立市場を築けるかは、量産による大幅なコストダウンを着実に進められるかにかかる。今後4~5年がまさに正念場だ。