●つくばエクスプレス線の柏の葉キャンパス駅前に広がる「柏の葉キャンパスシティ」の遠景
●つくばエクスプレス線の柏の葉キャンパス駅前に広がる「柏の葉キャンパスシティ」の遠景

 マンションや戸建て住宅の開発を手がける三井不動産レジデンシャルは,柏の葉キャンパスシティに建設したマンションにおいて,家庭からのCO2排出量を“見える化”するプロジェクトを実施した。約90世帯に電力のモニタリング装置を設置して省エネを支援したところ,1世帯あたり年間0.3~0.5トンのCO2排出削減効果を確認できたという。

 同社はこのモニタリング装置を,同じ柏の葉キャンパスシティ内で 2010年初に販売開始予定の新築マンション1500戸に標準装備する計画だ。環境配慮型マンションとして付加価値を高め,環境意識の高い消費者にアピールすることを狙う。同時に,マンション全体で450トン~750トンのCO2排出削減量を見込んでおり,これを街全体の環境対策を推進するNPOが買い取ってクレジット化する計画も進めている。

90世帯を対象に「省エネ実証実験」を開始

 2007年度の国内のCO2排出量の中で,家庭からの排出量が占める割合は14.7%だが,京都議定書の基準年である1990年に比べると4割以上伸びている。しかも前年度比の伸び率で見ても,産業や運輸,オフィスなどの業務部門が横ばいあるいは減少に転じているのに対し,家庭部門は8.4%増。もはや,家庭の省エネは,温暖化対策の最重要課題になっている。

 こうした中,三井不動産レジデンシャルは,電気やガスの消費量をモニタリングする装置を新築マンションに設置し,CO2排出量を“見える化”することで家庭の省エネを支援するシステムを考案。2009年1月に,その効果を実証するため,つくばエクスプレス(TX)線の柏の葉キャンパス駅前に建設した「柏の葉キャンパスシティ一番街(151街区)」の入居者約90世帯を対象に,「CO2削減見える化プロジェクト」を実施した。

 「CO2削減見える化プロジェクトは,単に各世帯の省エネを推進することだけが狙いではない」と,千葉支店開発室主査の大宅将之氏は切り出す。「当社が街づくりをするときに最も重視しているのが,住民によるコミュニティの形成。住民同士が交流を持ち,楽しみながら街づくりに参画できる仕組みをどう作るかが重要だ。いろいろ検討した結果,“環境”を主要テーマの一つとして位置づけることにした」(同氏)。省エネやリサイクルといった環境の話題は,主婦の間でも関心が高い。同プロジェクトには,コミュニティ形成を後押しするという,もう一つの大きな狙いがあるというわけである。

写真1●省エネナビの計測器
写真1●省エネナビの計測器
洗濯機のコンセントに接続しているところ。電流センサーを取り付けて電力消費量を測定,無線で表示器にデータを送信する。

 プロジェクトに参加した家庭では,「省エネナビ」と呼ばれるモニタリング装置を設置して電力を測定する。省エネナビは,3台の計測器と,表示器とで構成される。分電盤や家電のコンセント部分(合計3カ所)に電流センサーを取り付けて電力消費量を測定し(写真1),データを10分ごとに無線で送信して,表示器に測定結果を表示する(写真2)。

 表示器は,リビングなど家族全員が見やすい場所に置くことを想定し,インテリア家具にマッチしやすいシンプルなデザインにした。電力消費量のデータを受信すると,数値とLEDの灯りで表示する。消費量が増えるにつれて点灯する星の数が増えていき,消費の多さを直感的に分かりやすくしている。「エアコンなど,数時間にわたって使用するような家電の電力を測ると省エネ効果が出やすい。星が1つ点くと約160円の電気代を使ったことになる」(大宅氏)。

写真2●「省エネナビ」の表示器
写真2●「省エネナビ」の表示器
インテリア家具にマッチしやすいシンプルなデザイン。数値とLEDの灯りで電力消費量を表示する。
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写真3●PCの消費電力を測定
写真3●PCの消費電力を測定
手前に表示器があり,それに隠れるようにして計測器が置かれている。PCのコンセント部分に電力センサーを取り付けて電力を測定している。
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