写真●芦屋広太氏
写真●芦屋広太氏
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 新刊「人を動かす9の基礎力と27のエクササイズ」の著者である芦屋氏が,3回連続で人を動かす技術の重要性や習得するための注意点,さらに教育論まで語る。第2回は人を動かす技術をどう学べばよいか,「べからず」集は何かを中心に聞いた。(聞き手は,田中 淳=ITpro)

ヒューマンスキルは「頭では分かるけど,なかなか実践できない」というケースがよくあります。学んだことを実践で生かすコツはありますか。

 ゲームとしてとらえると,面白く実践できますよ。

 たとえば,今回の仕事で,上司に自分の企画を説明してOKをもらわなくてはならないとします。ところが,上司は企画を通してくれません。「上司からNOを出された」とだけ考えると,気が滅入ってきます。私もそういう気持ちになります。

 そういうときに「これは戦略ゲームなんだ」と考えると,見え方が違ってきます。「上司を説得する」をゴールとするゲームに勝つためにはどうしたらいいか,と作戦を考えてみるんです。すると自分の嫌な感情が消えて,純粋にゲームを楽しむ余裕も出て来るものです。

しかし,ゲームとして考えても,上司の説得は難しいのではないでしょうか。

 それはそうです。一般に,上司は年齢,経験,知識などほとんどの面で部下より上ですから,そう簡単にはOKをもらえません。でも,難しいからと言って悲観する必要はありません。ちゃんと考えれば,「突破しやすくなる」方法は必ず見つかります。

上司は部下をサポートする存在

 そもそも,なぜ多くの場合,部下は上司を突破できないのでしょう。答えは簡単で,突破できる作戦をもっていないからです。多くの人は作戦をもたず,場当たり的に上司を説得しようとして失敗するんですよ。

 まず理解しておかなくてはいけないのは,上司は部下をサポートしてくれる存在ということです。部下との人間関係が著しく悪い,上司の人間性がひどいといった場合でない限り,基本的に上司は部下を助け,育てたいと考えているものです。

 部下が,自主的に考えた「よくなる」ことを説明しにくれば,上司はその部下を「とても前向きだ」と考え,評価します。当然,内容がよければ基本的にOKを出したいと考えているのです。

 だったら,上司はいつもOKを出したがっているのに,なぜOKが出ないのでしょう。それも答えは簡単で,多くの場合は「部下の視点」と「上司の視点」が違っていることに気づかないからです。こんな具合に考えていくと,上司を説得するゲームもなかなか面白いことが分かりますよ,