米Microsoftと米Yahoo!が検索分野での提携を発表した。その後,Yahoo!の株価は急落した。苦境にあえぐYahoo!が,Microsoftからあまり有利な条件を引き出せなかったとして,アナリストらからは不満の声が上がっている。だが,Yahoo!と提携したことで獲得する30%という検索市場のシェアは,Microsoftにとって大きな意味がある数字である。

Take1:Ballmer氏,「みんな分かっていない」と批判に反論

 MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は,アナリストらからの不満の声に間髪入れずに反論し,両社の提携の妥当性を主張した。「みんな分かっていない。これはWin-Winの提携だ」と同氏は発言。同社の検索プラットフォーム「Bing」を利用してYahoo!のサイトで発生した広告収入の88%がYahoo!に入るうえ,同プラットフォームの拡充に関してYahoo!は研究開発費を支払う必要がないという点を指摘した。

 問題は言うまでもなく,Yahoo!のCEOであるCarol Bartz氏が以前行った軽率な発言にある。同氏は,「多額の金銭」を手にしない限り,Yahoo!の検索エンジンを見捨てることはないと述べていたのだ。私が考えるに,札束入りの麻袋はどこにもないはずである。

Take2:Microsoftのマジックナンバーは「30」

 MicrosoftとYahoo!の劇的な提携話を受けて,米New York Times紙のSteve Lohr氏がMicrosoft CEOのSteve Ballmer氏にインタビューし,そこから興味深い分析を行っている。それによると,どんな市場であれ,Microsoftにとって転機となる数字は常に30%だという。競合他社の市場シェアが30%に達したら,その製品は要注意だし,Microsoftの市場シェアが30%に達したら,その製品は利益と成功につながる可能性があるということだ。

 かつての米Netscapeとのブラウザ戦争でも,30%という数字が重要な意味を持っていた。Microsoftは,「Internet Explorer」の市場シェアが30%に達した時点で,当時トップの座にあったNetscapeの確固たるライバルとしてようやく同じ土俵に立てたと確信し,Netscapeを打ち負かすチャンスを得た。

 今回Yahoo!と手を結んだことで,Microsoftの検索サービス「Bing」の米国での市場シェアは30%弱に達する(関連記事:Microsoftを一度拒否したYahoo!が10年間の提携を結んだ理由)。これは,まさに同社が求めていた数字だ。いずれは同社単独でもそのシェアに達した可能性は考えられるが,何年もの期間がかかってしまっていたはずだ。