米Microsoftと米Yahoo!が2009年7月29日(米国時間)にインターネット検索分野で提携すると発表したところ,当たり前だが大きな注目を集めた。両社は何年もいろいろな方法を模索し,時には対立関係にあった(関連記事:MicrosoftとYahoo!が検索分野で10年間に渡る提携を発表した狙い)。

 ところで,米Googleはどうしているのだろうか。MicrosoftとYahoo!の提携が実現した後も,Googleは2位以下に大きく差を広げたインターネット検索市場の最大手企業であり続けるだろう。だが,最終的に3社のなかで一番の貧乏くじを引いた。Googleは今回の提携を気にしているのだろうか。今回の提携が,Google支配体制を終わらせる引き金に果たしてなるのだろうか。

 Googleがこの件についてコメントを出したのは,7月29日のことだ。同社の検索/ユーザー・エクスペリエンス担当副社長であるMarissa Mayer氏は,検索市場から1社退場すると競争が減るため「残念」と述べ,「競争相手が多いほど速く走れるものだ」とした。

 さらにMayer氏は,「MicrosoftはYahoo!から牙を抜いてしまうため,革新の妨げになるのではないだろうか」と疑問を呈した。同氏によると,今後Microsoftは,新検索サービス「Bing」を立ち上げたときのような切迫感や「方向感覚」を失うという。

 Googleは,この提携について米国と欧州の独占法禁止法(独禁法)当局にすぐ働きかけるはずだ。正式な申し立てを行うことで,迅速に交渉を始める可能性もある。かつてGoogleは,Microsoftが2008年にYahoo!買収を試みたことで「面倒な問題」が生じ,Microsoftによる不公正なデスクトップOS支配体制の継続を許してしまうと非難した(その後Microsoftは買収を諦めた)。

 ところがMicrosoftとYahoo!の提携規模は,Yahoo!全体を買収することに比べ非常に小さい。両社の検索エンジンを合わせたところで,利用シェアはGoogleの半分に満たない。しかもMicrosoftとYahoo!は,Webサイトやメール・クライアント,インスタント・メッセージング(IM)サービスに関しては統合しない。仮にMicrosoftがYahoo!を買収していたら,統合を実施していただろう。現在Yahoo!の米国市場におけるシェアは20%だが,Microsoftと合わせて28%の第2位に上昇すると言ったところで,大して意味はない(欧州の状況はますます面白みに欠ける。両社のインターネット検索市場シェアは合計10%に過ぎない)。

 Googleは,批判を「消費者の選択肢が狭まる」点に集中させていくだろう。ただし変化の激しい市場では,統合は避けられないことであり,好ましくもある。規制当局が申し立てに耳を傾けるかどうかも定かでない。特に,提携騒ぎが落ち着いた後も市場の圧倒的リーダーであり続ける企業の申し立てとなると,なおさら怪しい。

関連記事(英文):

・「Microsoft, Yahoo! Announce 10-Year Internet Search Alliance」(「MicrosoftとYahoo!が検索分野で10年間に渡る提携を発表した狙い」)
・「Microsoft/Yahoo Deal Imminent」(「MicrosoftとYahoo!が間もなく提携」)