政府の景気対策の一つとして,2009年5月に始まった「エコポイント制度」。省エネ基準を満たすエアコン,冷蔵庫,地上デジタル放送対応テレビの3品目を購入するとポイントが付与され,所定の「交換商品」と引き換えられるというものだ。スタートから2カ月半が過ぎたが,一定の経済効果を上げているようだ。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が発表した6月の民生用電子機器の国内出荷実績によれば,薄型テレビ(10型以上の液晶テレビとプラズマテレビの合計)は出荷台数が前年同月比28.5%増の108万7000台と,3割近く伸びた。100万台超は3カ月ぶりで,単月では今年最高の台数になったという。

 エコポイントが,薄型テレビや冷蔵庫販売の追い風になっているのに対し,エアコンではいまひとつ。日本冷凍空調工業会によれば,6月のルームエアコンの出荷台数は,気温があまり上がらなかったことから前年同月比6.5%減だった。だが,夏本番はまだこれから。ビックカメラをはじめとする量販各社は,エコポイントを使った様々なキャンペーンで攻勢をかけている。

プラズマテレビがわが家にやって来た

 調査会社のシード・プランニングが実施したエコポイントに関する調査では,薄型テレビを購入した人の42.4%が「エコポイント制度を利用するため購入時期を予定より早めた」と回答。対象となる家電3品目の中でも,テレビが最もエコポイントによる販促効果が顕著という。

 何を隠そう筆者も,エコポイントを取得した消費者の一人だ。7年間使ってきたブラウン管のハイビジョンテレビから薄型のプラズマ・フルハイビジョンテレビに,この7月に買い換えた。正直なところ,エコポイントはあってもなくてもよかった。買い替えを思い立ったのは半年以上前のこと。リビングの一番奥に鎮座するテレビの画面(特に文字)が,加齢もあってか,だんだん見えにくくなってきたからだ。

 「もっと大きな画面のテレビに買い換えたい」。たびたび家族に訴えてきたが,元来が節約志向の夫,学校で環境教育の洗礼を受けている子供たちは,ともに賛成してくれない。「まだ十分使えるのにもったいない」,「見えにくいなら眼鏡を買い替えよ」などとつれない。

 だが百聞は一見に如かず。友人の家に飲みに行った夫は,そこで大画面の液晶テレビを見て感激して帰ってきた――。チャンス到来! 早速,自宅近くのY電機に出かけて品定めをした。もともとプラズマ派だったわが家は,パナソニックのVIERAに絞って,大きさや機能を入念にチェック。ディスクレコーダーやシアターシステムとワイヤレス接続できるZシリーズに大いにそそられたが,予算をはるかにオーバーしているため,断念。Vシリーズに落ち着いた。

ネットで手軽にポイント申請のはずが

 かくして,3万6000点(1点=1円相当)のエコポイントを手に入れた。元来整理整頓が苦手な筆者は,すぐに商品に交換してしまわないと,申請に必要な領収書などを紛失してしまいかねない。早速,ポイント登録と交換申請をネットで済ませることにした。

 だが,はたと困った。交換したい商品がない。百貨店やクレジット会社の商品券,SuicaやEdyなどの電子マネー,地域型商品券,地域産品,省エネ・環境配慮製品と5つのカテゴリーに分かれているが,魅力的な商品が見つからない。先のシード・プランニングによる調査によると,交換商品としては,商品券やプリペイドカードが一番人気で,次いでおこめ券などの「食品・飲食券」,Suicaなどの鉄道会社の電子マネーが続き,地域産品や省エネ商品のニーズは低いという。やはり,あれこれページを開いて商品を選ぶより,手軽で価値を特定しやすい金券に人気が集まるようだ。

 とはいえ,3万6000点すべてを金券にするのも,あまりに芸がない。そこで,エコロジーといえば多様性の価値→多様な地域経済の活性化→特産品の購入と,屁理屈なりに筋道を付け,地域産品を購入することに決めた。

 よく見ると,地域産品には全国型と都道府県型がある。前者は百貨店や通販会社が運営しているショッピングサイトの「ふるさと物産展」のようなもので,全国の物産を網羅的に見るには便利だが新鮮味に欠ける。そこで,後者の都道府県型,すなわち地方の事業者がそれぞれ立ち上げているエコポイント交換商品の企画サイト(全部で40サイトほど)を地道に訪ね,商品を選ぶことにした。

 北海道のアイスクリームに始まり,千葉のメロン,新潟のお米,北九州の晩酌セット,宮崎のマンゴージュースの5品目を選んだところで2万2500点。これと1万2000円分のSuica(1万3500点)とを合わせて3万6000点である。うまく収まったと思ったが,エコポイントの交換申請ページを開いたところで,また困った。1枚の交換申請書には,4品目しか記載できないのである。5品目以上と交換したい場合は,別ページで交換申請書と添付書類をもう1セット作成し,同封して送れという。添付する領収書は,コピーではなく,原本を送る必要があるためだ。

 結局,住所,名前,購入した省エネ家電の型番,購入店名など,ちまちまとした入力を2回やる羽目になった。今さらではあるが,せめて10品目くらい一度に記入できてもいいのではないか。交換商品は,単価が安いものが多いのだから。

秋風が吹く前に・・・

 7月10日ころに申請書類を事務局あてに送ったが,筆者のマイページの個人IDはまだメールで送られてこない。マイページとは,エコポイントの取得状況や商品との交換状況を確認できるページである。果たして,事務局からのメールを消してしまったかと思い,電話で問い合わせてみることにした。すると,インターネットでの登録・申請は確かに受け付けたが,郵送書類の審査とポイント認定が済んでいないため,個人IDはまだ発行していないという。

 「いつごろIDは発行されますか?」。筆者がおそるおそる聞くと,「申請後,1カ月半くらいかかります。何しろ毎日1万件くらい申請書が届きますので・・・」との返事。当然,交換商品の発送もそれ以降になるという。下手すると,9月中も危ないかもしれない。

 やれやれ,アイスやらメロンやら,夏の味覚ばかり頼むのではなかった。今はただ,秋風が吹く前に,地方からのお届け物が到着することを祈るばかりである。