米Microsoftと米Yahoo!が予想通り大きな発表をした。Microsoftが検索サービス「Bing」の検索結果をYahoo!に提供し,Yahoo!の販売部門が両社の広告販売窓口になるという内容だ。Microsoftは,「この提携が両社の力を相互補完し,ユーザーと広告主にも利益をもたらす」としている(関連記事:Yahoo!とMicrosoftが検索事業で10年にわたる提携を正式発表Microsoftを一度拒否したYahoo!が10年間の提携を結んだ理由)。

 MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は「この提携を通じて,検索分野を今まで以上に革新し,広告主に提供できる価値を高め,現在たった1社によって支配されている市場で真の選択肢を消費者に届ける。検索分野で成功するには,革新と規模の両方が必要だ。当社は新しい検索プラットフォームであるBingによって,革新的な機能を実現させた。Yahoo!と提携することで,検索分野の未来を作り上げるのに必要な規模とリソースを手に入れる」と述べた。

 一方,Yahoo!のCEOであるCarol Bartz氏は「今回の提携は,これまでにない革新と発展をインターネットで実現するための基盤を作る。当社は今後も欠かせない機能として検索サービスを提供し続け,提携によって得られる規模とリソースでさらなる革新をユーザーにもたらしていく。規模の拡大は広告主のメリットにもつながるし,広告プラットフォームと販売窓口の1本化で関連業務の利便性と効率が高まる。そして最後に,ユーザー獲得,オンライン広告,モバイル展開といった重点分野に対する投資を増やせる」としている。

Googleに対抗するために「WIN-WIN」の関係を目指す

 具体的な提携内容は何かと興味深い。Microsoftはこれからの10年間,両社の検索サービス関連技術を全面的に担当する。こうして同社は,Yahoo!の神髄(しんずい)である検索技術を独占的に利用し,自社の検索サービスに組み込む権利を得る。Microsoftは世界で2番目に多いインターネット検索ユーザーに働きかけられるし,Yahoo!の検索技術でBingを強化できる。

 今回の提携で,MicrosoftはYahoo!に前払い金を一切渡さない。一方Yahoo!の手元には,契約期間の前半5年には自社サイトで得た広告収入の88%しか残らない。だが,Yahoo!は今回の提携の効果として,1年当たり営業利益5億ドル増,設備投資2億7500万ドル削減と見積もる。そして,その浮いた費用をWebポータルとエンタテインメント事業の強化に使う考えだ。その上で両社は「提携がWebサイトや各種製品,メール/インスタント・メッセージ(IM)/オンライン広告など,それぞれの事業に影響を及ぼすことは全くない」としている。Microsoftによると,こうした事業分野では,両社は今後も活発に競争を続けるという。

 この提携は,独占禁止法に触れる疑いで調査されることが当然予想される。これに対し,両社は関係当局が確認するまで検索技術の統合に着手しないと合意した。Microsoftは「2010年の早い時期に契約手続きを完了し,それから数年以内に両社の検索技術を完全に統合できる見通し」としている。

 両社は「Choice,Value,Innovation」(選択,価値,革新)という名称のWebサイトを開設し,提携に関する詳しい情報を掲載している。