これまでの連載では,LTEを構成する技術を中心に述べてきた。最終回となる今回は,LTEをとりまく開発状況を解説して結びとしたい。
最初にLTEにかかわる二つの団体を紹介する。NGMN(Next Generation Mobile Network)とLSTI (LTE/SAE Trail Initiative)である。NTTドコモはいずれの団体にも参加している。
NGMNは移動体通信事業者の見解を提供したり,標準化を推進したりするための業界団体である。2009年6月現在で19の事業者と35のベンダーが参加しており,2010年以降の移動通信としてLTE, UMB(ultra mobile broadband,以前の1xEV-DO Rev.C), WiMAXなどの技術検討を行っている。LTEはその中でも最も有力視されている技術であり,2008年10月にはNMGN Boardの公式見解として,"3GPP LTE/SAE is the first technology which broadly meets its recommendations and is approved by its Board"としてLTEが「preference」(優先)であると宣言している。
もう一つのLSTIは,LTEの商用サービスの早期実現を目的とした団体である。活動の中心は,実証試験機を用いたLTEの性能の検証,複数のベンダ間での相互接続性の早期安定化に向けた試験などである。機器ベンダー,事業者,テスト装置ベンダーを含む39社(2009年7月現在)が参加し,2010年ころの商用システム開発完了を目標にしている。
250Mビット/秒を超えるスループットを実証
ドコモの開発スケジュールを図5-1に示す。LTEの開発を始めたのは2006年6月のこと。3GPPの標準化において,スタディ・アイテムと呼ばれる基本検討が完了したことを受けた。2007年7月には試作装置を用いた実験を開始した。さらに2008年2月には屋外実験を開始した。
図5-2が屋外実験と試作装置の概要である。屋外実験では,無線伝送特性のみならず,パケット・ロスのないハンドオーバーなどの主要機能の検証を実施した。また,ハイビジョン映像のストリーム再生やテレビ電話(双方向リアルタイム通信),オンライン対戦型ゲームなどのアプリケーションを通すことにより,無線特性の検証のみでなく,アプリケーションを通したときの体感についても検証した。