連載第1回では,機能要求を設計・実装する観点から,Force.comの特徴や優位性,注意点を説明しました。第2回では,Force.com上でシステムを構築する際の非機能要求(移行要件,運用保守要件,障害対策要件,セキュリティ要件,キャパシティ要件,性能要件)に対する考え方と注意点を説明します。

移行要件

 アプリケーションを開発し本稼働させる場合,従来型開発と同様,Force.comでも既存システムからのデータ移行は欠かせません。既存システムからForce.comへのデータ移行の方法には,大きく3種類あります。(1)インポートウィザードによる移行,(2)ApexDataLoaderによる移行,(3)EAI/ETLツールによる移行です。それぞれの実施方法や注意事項,制限事項を説明します。

(1)インポートウィザードによる移行

 CSV形式のデータをウィザード形式の画面指示に従ってインポートします(画面1)。Force.comが標準で備えるオブジェクト(取引先,取引先責任者)や,ユーザー定義オブジェクト(カスタムオブジェクト)に対してインポートする事が可能です。1度にインポートできるデータ件数が5万件以内という制限があります。

画面1●インポートウィザード
画面1●インポートウィザード
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(2)ApexDataLoaderによる移行

 ApexDataLoaderは,Force.comで標準提供されるデータを一括してインポート/エクスポートするための,クライアント・アプリケーションです(画面2)。操作を行うPCにインストールして実行します。

画面2●ApexDataLoader
画面2●ApexDataLoader
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 インポートウィザードとの使い分けは以下のポイントで考え,いずれかに該当する場合はApexDataLoaderを使います。

・5万件を超えるレコードをインポートする必要がある
・インポートウィザードがサポートしていないオブジェクトに対してデータをインポートしたい
・マッピング設定を事前に作成しておき,何度も実行したい

(3)EAI/ETLツールによる移行

 Force.comが提供するWebServiceAPI(SOAP)はWSDLが公開されており,Webサービス・クライアントを作成し,データ移行用プログラムを個別開発することが可能です。しかし,移行対象データの形式(CSV,XML,固定長ファイル,DBなど)や種類が大量にある,データクレンジング/フォーマット変換に工数が多くかかる,Force.com上に構築するアプリケーションが他システムとのデータ連携を伴うなどの場合には,高い生産性を持つEAI/ETL製品を使用してデータ移行を行います(画面3)。

画面3●EAI製品(DCSpider)の例
画面3●EAI製品「DCSpider」の例
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